アメリカ独立戦争時の戦乱の様子(Photo by gettyimages)
防衛・安全保障 週刊現代 歴史

かつてイギリス海軍が「世界の覇者」になれたワケ

地政学で読む海洋政策

イギリスの地政学的戦略

米国の海軍軍人アルフレッド・T・マハン(1840~1914年)は、歴史家、軍事理論家としても有名だ。『マハン海上権力史論』は海軍大学校での講義を整理したもので、1890年に『歴史に及ぼした海上権力の影響 1660~1783』というタイトルで刊行された。マッキンダーが陸の地政学の祖であるのに対して、マハンは海の地政学の祖だ。(佐藤優氏によるマッキンダーの書評はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52008

当時の覇権国であったイギリスに対する分析がこの著作の中心的位置を占める。特にイギリス・プロイセン対フランス・オーストリア・ロシア・スペイン・スウェーデンで戦った七年戦争(1756~63年)でイギリス・プロイセンが勝利したことに注目してイギリスの地政学的戦略について考察する。

〈イギリスは今日もそうであるが、ほかの諸国に比べて小さな陸軍をもって、まずうまく自国の海岸を守り、次いでその兵力をあらゆる方向に派遣して遠隔の地方にその支配と影響力を拡大した。そして彼らをイギリスに従属させたばかりでなく、イギリスの富、その力及びその名声に貢献させた〉

マハンは、イギリスが海軍を機動的に用いていることを高く評価する。さらに重要なのは、このような海洋政策を英国の政治エリートと国民が支持していることだ。

 

〈イギリスの努力は、その国民の生まれながらの才能とピットの火のように輝く天才によって指導された。その指導は戦争後も続いて行われ、その後のイギリスの政策に大きな影響を及ぼした。

イギリスは今や北アメリカの女王となり、また東インド会社を通じてインドを支配するに至った。イギリスはそのほかにも地球上に遠くかつ広く散在する他の豊かな領土を持っていた。

一方スペイン帝国は巨大ではあるが、ばらばらで弱かったがゆえに、イギリスはさんざんこれをこらしめることができたという有益な教訓をイギリスは眼の前に学んだ〉

イギリスは海上権力(シーレーン)を押さえることで、世界的規模でのネットワーク上の活動が可能になった。