photo by iStock
政治政策 メディア・マスコミ 不正・事件・犯罪

安倍政権に教えたい。前川前次官を「逮捕」するのは不可能です

プロが解説「守秘義務違反」本当の基準

学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題で、「総理のご意向」を示す内部文書が存在すると、文部科学省の職員が内部告発したことについて、義家弘介文科副大臣が「(一般論と前置きしつつ)国家公務員法違反になる可能性がある」と発言したことが、大きな波紋を呼んでいる。

義家副大臣の発言があった6月13日の参議院農水委員会については、「勇気を持って告発した職員たちの権利を守ってほしい」という自由党の森裕子議員の訴えに対して、処分の可能性を示唆した義家副大臣に対し、ネット上に「ペーパーの棒読みに見えた」といった意見が相次いだ。

発言の真意が見えない、というのが現状ではあるが、いずれにしても今回の内部告発を理由に、文科省が現職の職員たちを処分することは本当に可能なのか。公務員による公益通報に詳しい松山大学の牧本公明准教授は、義家副大臣の言う「国家公務員法違反になる可能性」を否定する。

保護される「秘密」は限られる

今回の一連の問題は、「国家公務員の守秘義務」と「公益通報者保護法」の両面から考える必要があると考えています。

 

まず、国家公務員の守秘義務との関係です。

国家公務員法100条は、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と定めています。国家公務員に守秘義務を課し、その違反者に対しては、同法109条十二号の規定により「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑事罰が用意されています。

しかし、最高裁の判例上は、世間一般に知られていないすべての事実の漏洩が、処罰の対象となるわけではないとされています。

マル秘や極秘などの判が押され、形式的に秘密とされている事実(これを「形式秘」と言います)の中でも、真に秘密として保護されるべき事実(これを「実質秘」と言います)のみが秘密として保護され、その漏洩行為のみが国家公務員法違反に問われるべきであると考えられています。

本来、国家機関が保有する情報は、すべて主権者である国民のものであり、政府の都合で隠したりすることは許されません。例外的に、外交関係上、またはプライバシーの保護などの人権保障上必要と正当化できるものだけが、秘密とすることを許されているのです。

今回のケースについて言えば、そもそも国家戦略特区の認定についての議論は、できるだけ国民にオープンな形で進められるのが望ましい。

また形式的には、そもそも当該メール文書が文部科学省内部で秘密指定されていたのか不明であり、内容的にも、外交機密というわけでも個人の人権に関わるような内容というわけでもないので、今回の漏洩行為を国家公務員法違反に問うことができるかはかなり怪しいと言わざるをえません。