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若者が爆発的に増えると、なぜ国や社会は「甚大な危機」に陥るのか

<道徳感情>で激動の世界を読み解く【3】
世界と人間の謎はすべて<道徳感情>で解き明すことができる? 「サイコパス」のおそろしさを考察した「『サイコパス』はなぜここまで人を惹きつけてしまうのか」の次は、若者が増えすぎると国家や社会はどうなるのかについて、『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』著者による渾身の論考です。

若者人口が突出すると…

今回は、<道徳感情>を過激化させるユースバルジについてのお話から。バルジというのは膨らみのことで、若者人口が突出している現象のことです。

これまでの考察で見てきたように、中東でイスラム国が暴れているのも、格差が開いたため刺激された<道徳感情>から美しい理想に取憑かれることになったためではあります。さらに、彼らの場合は、ユースバルジの要素が加わっているのです。

中東ではベビーブーマーが若いので、若者の競争が激しく失業率も高く、不満が鬱積しています。とくに大卒のまともな仕事がないので、不平等感が強く<道徳感情>がより一層に刺激されているのです。

かつては、欧米や日本でも、ベビーブーマーが若かった時代は、凄惨なテロリズムが吹き荒れていました。いまから考えると嘘みたいな話ですけど、爆弾テロやら火炎瓶が飛び交って数千人が機動隊と乱闘したりなんて流血の事件が、この日本で連日のように繰り広げられていたのです。

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1972年にはイスラエルで、日本赤軍が100人以上を無差別に殺傷した<テルアビブ空港乱射事件>というのがありました。逃げ場のない場所で決行され、最後には自爆して死ぬ計画で、実際に手榴弾で自決しました。ひとりは不発だったので、死に損ねて捕まってしまいましたが。

「さすがカミカゼの日本人だ」と、欧米では妙な関心のされ方をしたものです。第二次大戦の特攻のことだけではなく、それ以前から日本では自滅的なテロの伝統があると解説されたりもしていました。

1年半前の三島由紀夫切腹に衝撃を受けてその背景を知りたいと切望した欧米インテリには、<二・二六事件>の青年将校や幕末の志士たちのことまでわりと知られていたのです。明治政府に無謀な反乱を起し切腹して果てた神風連を描いた、三島の小説『奔馬』の英訳が出たのは翌年でしたが。

当時は珍しかった無差別テロよりも、最初から死を決意した行動に注目が集まり、欧米の識者たちはそこに深い精神性の系譜を見出だそうとしました。

生き残った岡本公三は三島の自決を賛美していたり、虎ノ門事件で自ら死刑となった難波大助の名を偽造パスポートに記したりしてますので、まるっきり見当外れの分析というわけでもないのです。

イスラエルでさえ、「臆病なアラブ人は最初から死ぬつもりのこんなことはできないが、日本人は覚悟が違う」という、賞賛とも云えるような声が挙がったりしました。アラブに対する蔑視もあったんでしょうけど。

のちに自爆テロがイスラム過激派の代名詞のようになるとは、世界中の誰も思っていなかったわけです。当のアラブ人でさえ考えたこともなかった。それで、日本赤軍が彼らに自爆テロというものを教えたという人もいます。

重要なのは、たんなるテロより、自分も死ぬ自爆テロのほうが評判を得られるらしいということを知らしめた点にあります。