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不正・事件・犯罪 アメリカ

ご存じですか?アメリカでは「共謀罪」はこんな風に使われている

市民を「罠」にかける米国の捜査機関

「共謀罪」(テロ等準備罪)が国会で成立した。法務委員会での採決を省略し、参院本会議で可決成立させるという異例の手段をとった。

共謀罪は周知の通り、犯罪の計画に合意した者を処罰する罪だ。「市民生活に影響を及ぼす」、「日常会話が処罰の対象になりかねない」など、様々な反対意見がある。

しかし法案が成立したからには、私たちはこの条文を捜査機関が”どのように使うのか”、それによって”どんな社会になっていくのか”に、冷静に注意を払わねばならない。

米国には古くから「共謀罪」が存在し、捜査で幅広く使われている。実は私の取材対象だった、ニューヨーク在住のイスラム教徒2人も、この共謀罪でFBIに逮捕された。「共謀罪」が米国の捜査の現場でどう使われるのか、まずはお読み頂きたい。

男は”良い人”の仮面をかぶってやってきた

舞台はニューヨーク州の州都オルバニー。モハメド・ホサインが経営するピザ屋にある男がやってきた。男はピザを食べながら、店にで遊んでいたホサインの子供たちに話しかけ、ヘリコプターのおもちゃをプレゼントした。子供たちは言った。

「あの人は良いムスリムだ。イスラム教のことをもっと勉強したいらしいよ」

その男はたびたび店にやってくるようになり、ホサインと言葉を交わすようになった。ホサインはバングラデシュの貧しい農家の出身、豊かな生活を夢見てアメリカに渡ってきた。マリックと名乗るその男はバングラデシュの隣国、パキスタン出身で、ニューヨークでの事業が成功していることをほのめかした。

その言葉通り、いつもBMWやベンツに乗って店にやってくる。着ているのはブルックスブラザースの上質なスーツだった。

 

マリックは「イスラム教を学びたい」と言い、ホサイン一家が通うモスクに来るようになった。そして、ホサインに様々な救いの手を差し伸べるようになる。

ホサインには知的障害のある弟がいた。米国では運転免許は身分証明書として必須なのだが、知的障害があるので免許取得が難しかった。マリックは「私は通訳の資格があるので、テストに立ち会って助けてあげます」といい、実際のテストでは解答を教えて、本当に合格させた。

次に、マリックが持ちかけてきたのが儲け話だ。ホサインの店は近所の人の溜り場になってはいるが、経営は決して上手くいっていなかった。ある日、ホサインはマリックの家に招かれ、黒い物体を見せられた。

「これは地対空ミサイルの部品です。中国から輸入してムジャーヒドに売ります。彼らはアラーの名の下で、飛行機を撃墜します。あなたもこのジハードで金をつくりましょうよ」