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人口・少子高齢化 経済・財政

「老人」がいきなりIT企業で働くと、いったい何が起こるのか?

これは決して「他人事」ではなくなる

老人がスタートアップに転職

世の中には、特定の分野の人を過大評価しがちな人がいる。

特定の分野には、概ね3タイプあって、それぞれ「政治家」、「作家・研究者」、「起業家・経営者」だ。

(1)一人の人間としては妙に体力のある目立ちたがり屋という程度の人物に過ぎないのに、大臣・国会議員といった肩書きを持つ政治家を妙に有り難がる人、
(2)単に働くのが嫌いで凝り性だっただけの変人である作家や大学教授に、深遠な知性や精神性を見ようとする人、
(3)ただ運が良くて我の強い自己承認願望が強いお金持ちを、「成功者」として崇めて社会的にも立派な人であるかのように思い込む人、

などだ。

人の好みは多様であっていいので、いちいちケチをつけるのは余計なお節介なのかも知れないが、それぞれについて時々は、「全面的にたいした人間ではない『変わっているけど、普通の人』なのだな」と思うくらいの見直しをする方が、世間をスッキリ理解できて、誤解による損失(政治家に入れ込むとか、ツマラナイ会社に投資するとか)を避けることができるようになる。

今回は、これらの中でタイプ(3)の「起業家・経営者」、特に、スタートアップの経営者を過剰に尊敬してしまう性癖を解毒できるような、書籍を一冊ご紹介する。

ダン・ライオンズが書いた『スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家』(長澤あかね訳)だ。

 

ダン・ライオンズ氏は、『ニューズウィーク』で記者をしていたが、2012年に51歳で解雇される。その後、少々の経緯を経て、ハブスポットという2014年にIPO(株式公開)されたIT企業に職を得て、約2年弱この会社に関わることになるのだが、この会社で彼が体験し見聞きしたことを書いた体験記系の内幕ものがこの本の大筋だ。

タイトルから想像できる通り、外から見たのでは分かりにくいあるスタートアップ企業の中身の薄さと馬鹿馬鹿しさが皮肉たっぷりに描かれているのだが、同時に、リストラされた老人が(筆者は現在59歳なので、リストラされた時点で51歳の彼を「老人」とは書きたくないが、若いIT企業にあって自身が「老人」だったと著者は書いている)、若いスタートアップ企業に勤めると、どのような扱いを受け、それをどう感じたかを、自身の心情として、事細かに書いている点も読み所だ。

日本で言うなら、日本経済新聞でコラムを書いていた編集委員のような人が、いきなりリストラされて、若いベンチャー企業に転職したような感じだと思って頂くといいだろう。

日本経済新聞社の場合、このような解雇はないだろうし、一方、記者クラブに加入して、官庁からも企業からも、情報は主として向こうからやって来る日経と、米国流のジャーナリズムの下にあるニューズウィークとでは、肩書きはジャーナリストでも職業上の感覚は相当に違うだろうが、働くオジサンの実感のギャップは似たようなものだろう。

日本でも、今後、この著者と似たタイプの職業選択は増えて来るだろうから、この本をまったくの「他人事」とは思えない読者が多いはずだ。

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