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ライフ 週刊現代

まじめに考えておきたい「妻に何を残してあの世に逝くか」…

有名人たちが明かす胸の内

そんなに良い夫でも父親でもなかった自分に添い遂げてくれた。日頃、面と向かって言うのは照れ臭いが、心から感謝している。ともに生きた彼女に、最後に残せるものがあるとすれば、何だろう。

形あるものは難しい

「3年前に前立腺ガンの診断を受けたとき、いろんなことを考えました。突然、『死』を身近に感じてしまったのでね。

当然、女房(昌恵さん)に何を遺したいか、ということについても真剣に考えました。少なくとも僕が死んで女房が困るようなことはしたくなかった。

幸い、2010年から恵比寿ではじめたバーの借金は昨年完済しましたし、僕が亡くなったとしても、女房が生活できるだけの生命保険は入ってくる。だから遺したいものは、格好よく言えば、家族の深い『絆』です」

こう語るのは、巨人や日本ハムなどで中継ぎ、抑えとして活躍した角盈男氏(60歳)だ。

2014年2月に前立腺ガンの診断を受けた。手術は行わず、通院による治療で完治し、現時点で再発もない。

「病気になって一番感じたのは、心身ともに頼りにした女房のありがたみです。
僕自身、闘病中はほとんど自覚がなかったんですが、薬の副作用で精神的に波があったようです。でも、そんな僕を女房はうまくかわして治療につきあってくれた。

今、一緒に店に出てお客さんを相手にしているときも、『ちょっと飲み過ぎじゃない?』『疲れていない?』とさりげないチェックが入ります」

感謝の言葉を口にする角氏だが、最期に妻に「形」として何かを遺すことは全く考えていない。それには深い理由がある。

「僕は男ばかり三兄弟ですが、実は4つ年上の長兄が、僕が小学6年生のときに突然死してしまったんです。今、生きていれば65歳でした。

兄は近所の方々にもかわいがられる存在で、ラジオを良く聞いていました。お墓にラジオを置いて兄が好きだった番組を流してくれる人がいたんですが、兄の墓参りにいった母がある日、そのラジオを聞いて、取り乱してしまい、しばらく外出できなくなってしまったことがあるんです。

おそらく亡くなったはずの兄が一瞬、生き返った、と錯覚して、母の深い悲しみに輪をかけたのだと思います。そんな母の姿を見てきて、『形が残る残酷さ』を痛感しました。

何でも動画で見られる時代なので、生前の姿が流れれば、さも生きているように錯覚する。それが遺された者にとってはつらい場合もある。その感覚は女房も共有しています。だから生前に二人で好きなゴルフをやって、たくさん思い出を作っておくほうが幸せなんじゃないかな、と。

遺言のようなものを残すことも考えていない。遺影を見て、思い出してもらえれば、それで十分です。

家族みんなに囲まれて、女房に『ありがとう』、息子二人には『母ちゃんを頼むな』と一言だけ言って死ねるのが最高の引き際かな。

亡くなった後に、財産分与のことでもめ事が起きる、と聞いたことがあるけど、それは普段から家族同士が深いコミュニケーションをとれていれば起きないと思いますよ」

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角氏の次男の晃多さんはプロ野球・ロッテの元選手で現在は独立リーグ・武蔵ヒートベアーズで野球を続け、長男の一晃さんは、埼玉県内の工務店経営者。角氏は時間があれば二人と会って、食事をしたり、二人の孫と遊んだりしている。

生きていく力をあげたい

角氏同様、おカネではないものを残したいと言うのは作曲家の三枝成彰氏(74歳)だ。

「僕が女房(祥子さん)に最期に遺したいのは、『本当にありがとう』という感謝の気持ちです。

彼女は『あなたが死んだら、私も死ぬわ。一緒の日に死にたい』とうれしいことを言ってくれますが、22歳も離れているので、こっちが先になるのは当然です。

僕たち芸術家が残せるものというと『作品』だけで、決しておカネではありません。
僕はオペラで20年間で60億円使いました。一番多い時で7億円ぐらいの借金がありましたが、それはすべて返しました。もし僕が死んだりしたら、女房が困るからです。

60億円もあればマンションが1棟買えて、左うちわで生活できるはずでした。僕が後悔したことを口にしても、女房は『そうだね。でも良かったんじゃない』と苦笑いするだけ。むしろ僕の作品を好きでいてくれる。そのような女房と一緒にいられて、良い人生を送れたなと思います」

 

三枝氏は、妻に年長者ならではのこんなアドバイスを残している。

「僕は女房に『医者を信じるな』『必ず3人の医師に診てもらいなさい』と伝えました。親しくしている医者から『医者にも誤診が多いんだよ』と言われたことがあるからです。

前の女房が、卵巣嚢腫と診断されたことがありました。違う病院へ行ったときも同じ診断が下されて『除去しましょう』となった。でも、さらに違う病院へ行くと『これは単なる便秘ですよ』と言うんです。便秘で卵巣を取られる可能性があったんです。

こっちが死んだ後は女房にはできるだけ長生きして幸せになってほしい。再婚してくれてもかまいません」