Photo by Getty Images

安倍政権「キーマン」が貿易会議で見せた、知られざるファインプレー

これでTPPイレブン構想が生き残った

先月のことだが、これがまさに「経済外交」であるという手本のような外交交渉があった――。5月20~21日、ベトナムの首都ハノイでのことだ。

アジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合(議長=アイン・ベトナム商工相)が開催された。日本から世耕弘成経済産業相が出席した。

世耕経産相の訪越前、経済産業省(菅原郁郎事務次官)関係者だけではなく、首相官邸も注目していたのは、同会合にロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が出席し、世耕経産相と初めて手合わせをすることになっていたからだ。

トランプ大統領と居並ぶライトハウザーUSTR代表(左端)トランプ大統領と居並ぶライトハウザーUSTR代表(左端)

対日強硬派に対する秘策人事

レーガン政権時代の1983~85年の3年間、USTR次席代表だったライトハイザー氏は、当時の日米貿易摩擦の真っ只中に厳しい対日批判を繰り返し我が国の外交・通商当局者に”唾棄”されたタフネゴシエーターである。

自動車、鉄鋼業界の最高幹部や経済省庁の幹部OBは今でも対米輸出規制を強いられた当時の対日強硬交渉ぶりがトラウマとなっていて、ライトハイザーの名前を聞くだけでも眉をしかめるほどである。

世耕経産相はそんなライトハイザーUSTR代表と向き合ったのだ。ところが、同行した経産省幹部の心配は杞憂に終わった。世耕・ライトハイザー会談は噛み合い、終始友好的な雰囲気の中で第1ラウンドが終了したというのである。

それにはもちろん、理由があった。まず、同省は会談前の4月18日付で通商・法務関係者のプロが思わず唸った人事を行っていたのだ。

欧米主要国の通商・法務政策の担当者の間では“超有名人”である西村あさひ法律事務所の米谷三以(こめたに・かずもち)氏を経産省通商政策局通商法務官・国際法務室長に任命した。

米国のミシガン大学ロースクール出身の同氏は、これまで長島・大野法律事務所、米ステップトゥー&ジョンソン法律事務所、WTO(世界貿易機構)、経済産業省などで通商・法務部門の交渉術を磨いた国際紛争交渉の腕扱きである。

その米谷通商法務官が、ハノイで世耕経産相らに合流したのだ。USTR内にも知己が多い同氏が「チーム世耕」に加わったことから、さすがのライトハイザー代表も得心がいったという。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら