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注意障害を持つ妻にとって、ホームセンターはワンダーランドだった

されど愛しきお妻様【13】

41歳で脳梗塞で倒れたルポライターの鈴木大介さんが、「大人の発達障害さん」のお妻様とタッグを組んで過酷な現代社会をサバイブしてきた18年間を振り返る本連載。「お妻様が使えない」のではなく「使うのがヘタ」と気付いた鈴木さんが、ある作戦を開始します。その作戦とは?

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ホームセンターはワンダーランド

ほとんどの家事をお妻様はあまり重視していなくて、家事を必要に感じているのが圧倒的に僕である以上、やって当然だというのは価値観の押しつけ。家事のイニシアチブを取って率先して動くのは僕だ。その上で僕は僕が面倒だったり苦手だと思う作業をお妻様にお願いする。ようやくコンセプトが固まり、作業を進めていった。

まずは溢れるお妻様の私物を収納する場所の確保の続きだが、部屋の収納スペースを占拠していた僕の不要物の廃棄をお妻様と協力して終わらせると、次は収納ケースや棚などを設置する作業。寸法を測ってメモし、ホームセンターでちょうどいい品を探すのは、僕の担当だ。

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注意障害を持つお妻様にとってホームセンターはワンダーランドで、もう興味を惹くものが多すぎてまず目的の商品売り場に到着できないし、しかもお妻様は頭の中で収納スペースにきっちり収まるケースなどを想像するのも苦手だから、そこはお任せできない。

「ねえ大ちゃん、これなんかよくない?」

「おしゃれだけど、奥行き30センチしかないケース買って、90センチある押し入れの奥の余ったスペースどうすんの?」

「そうか。じゃあこっちは」

「奥行き90センチの引き出しはメチャクチャ使い勝手が悪いです。絶対に奥がデッドスペースになります」

「そうか」

 

とまあ、一事が万事こんな感じなので、候補の商品をいくつか選ぶのが僕担当。お妻様が購入の最終決定を下す。僕がパニックを起こすレジでの会計は当然お妻様の担当で、商品を車に積み込むのが僕。

ようやく帰宅してからも、やはり分担だ。買い込んできた棚やケースを梱包している段ボールや結束紐を切って開梱し、ゴミをまとめるのがお妻様の作業。僕はと言えば、そうした作業が大嫌い(イライラする)な僕は、開梱作業のスペース確保や開梱後の商品を説明書通りに組み立てる作業を担当する。

ちなみにお妻様は説明書の読解が非常に苦手なので、組み立て中に出る小さなゴミを僕から手渡され、分別して袋にまとめる。

「面倒じゃない? お妻様はそういう作業イライラしない?」

「全然~。組み立てはどう?」

「うー。脳梗塞の前はこういうの得意だったけど、なんか頭が混乱する。けど、リハビリだと思ってやる」

「そうか。頑張れ。あたし説明書読んでも意味わからんから」

こうしてどんどん収納スペースが出来ると、必然的に居住スペースも広く快適になり、他の家事もやり易くなった。お妻様に「やっぱ広い方が快適でしょ?」というと「いまいち差がわからん」そうだが、まあそんなものだろう。大事なのはそこじゃない。やっぱりそうだ。あの清掃センターでの発見は、気のせいじゃなかった。

お妻様と僕の苦手とする作業は、面白いほどにズレている。ならばもう遠慮は要るまい。僕は自分の苦手とする作業を、お妻様に振りまくることにした。

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