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医療・健康・食 ライフ 週刊現代

医師が警告!ラジオ体操は「膝」と「腰」を痛めます

簡単な運動、と甘く見てはいけない

学校で、職場で、地域のイベントで――実に60年以上も親しまれてきた「国民的体操」。だが「簡単な運動」と甘く見ていると、ふとした動作で思わぬ負担を身体にかけ、大ケガのもとにもなるのだ。

「飛ぶ」のが危ない

「毎朝6時から、夫と一緒に地域のラジオ体操に参加していました。体操をやっている公民館までは徒歩20分。朝の運動として、ラジオ体操と散歩のルーティンをもう10年近く欠かさず続けていました」

こう語るのは、栃木県に住む川口恵美さん(72歳・仮名)だ。

しかし川口さんは昨年から膝の痛みに悩まされるようになり、現在は朝の運動を控えている。

「最初はなんとなく膝が痛いな、と違和感を覚える程度でしたが、年のせいか、と特に深刻に受け止めていませんでした。日課のラジオ体操にもいつもどおり通っていたんですが、だんだん膝の痛みが強くなり、下半身を動かす体操で、きちんとできないものが増えてきてしまって……」

 

さすがに様子がおかしい、と不安に感じた川口さんが病院で診断されたのは、変形性膝関節症。膝の軟骨がすり減り、神経を圧迫していたのだ。

骨と骨のつなぎ目には軟骨があり、そのあいだにクッションの役割を果たす半月板がある。膝の軟骨がすり減っていくのは、加齢とともに起こる症状だ。それが進行すると、軟骨と半月板のかみ合わせが悪くなり、半月板がバラバラになってしまう。これが膝の関節をつなぐ側副靭帯を圧迫して痛むのだ。

ちなみに60代女性では40%、70代女性では実に70%が変形性膝関節症であるといわれている。

実は川口さんの膝に思わぬ負担をかけ、関節痛を悪化させていた一因が、「健康のために」と熱心に通っていたラジオ体操だったのである。

南新宿整形外科リハビリテーションクリニック院長の橋本三四郎氏は次のように語る。

「特に跳躍を伴うラジオ体操の動作は、膝に不安のある人には向いていない動きといえます。加齢によって脚部の筋肉量が落ちてくるとうまく飛べず、着地するときに膝を深く曲げる傾向があります。実はこのとき、膝に大きな負担がかかっているのです」

ラジオ体操第1と第2には、「両脚で飛ぶ運動」があり、また第2には、同様に跳躍して身体を動かす「片足飛び」の動作が盛り込まれている。

膝に痛みがあったり、筋力が落ちていたりすると、ジャンプで前に転倒する恐怖心から、実際には膝を軽く曲げて跳躍している真似にとどめてしまいがちである。

この動作が膝や股関節といった下半身の関節可動部を痛めることに直結しているのだ。

前出・橋本氏が続ける。

「高齢者の運動障害で一番多いのは膝です。半月板がもろくなっている高齢者は、たとえば身体をひねっただけでも損傷してしまうこともあります。

場合によっては、骨挫傷と呼ばれる、レントゲンやCTでは出てこないような骨の症状が出てくることがあります」

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前屈でギックリ腰に

骨挫傷とは、骨に負荷がかかることで、骨の内部の組織が炎症を起こし、場合によっては骨内で出血してしまう症状のことである。

骨が折れる一歩手前ともいえるが、痛みや腫れがあっても、MRIで検査しないと発見しづらいのがやっかいだ。こうした損傷が、日常生活では気づかないうちに重症化していってしまうのだ。

お茶の水整形外科の銅冶英雄氏も次のように指摘する。

「マジメに毎朝ラジオ体操に通うような人ほど、知らず知らずのうちに身体に負担をかけていることがよくあります。よく、テレビ番組のモデルさんに合わせたり、周りの若い人に負けないように無理して身体を動かしたりする人がいます。

ですが、モデルや若い人たちは、関節や筋肉に支障がない健康体で、きちんと体操ができる人たちです。その人たちの動作をそのまま真似ることは、身体に相当な無理をさせていると心得てください」