企業・経営 経済・財政

日本のアパレルを殺した「戦犯」は誰なのか

一年で数千店舗が閉鎖している現実
杉原 淳一

アパレルだけの話じゃない

新興セレクトショップ「TOKYO BASE」の谷正人CEOは「我々が扱っているのは嗜好品。顧客ニーズなんて、そもそもない」という思考を基に、ビジネスモデルを組み立てている。徹底した計数管理で収益の基礎を固める一方、販売員の待遇改善に力を入るなど、多くのアパレル企業が「勘と度胸とどんぶり勘定」で処理してきた諸問題に切り込んだ。

ちなみに彼は、バブル崩壊後に過剰投資を続けたことが原因で倒産した静岡県浜松市の老舗百貨店・松菱の創業家一族だ。

海外市場で評価を高めている国産デニムブランド「JAPAN BLUE」の眞鍋徳仁専務は「我々1社だけで『日本のデニム』という市場は作れない」と、靴底を減らして開拓した海外の取引先をインターネット上で公開している。日本の別のデニムブランドが、そのルートを使って販路を広げてもまったく構わないという。

ともすれば閉鎖的になり、消費者よりも「内輪の論理」を優先する傾向があるアパレル企業にとって、この話は耳が痛いだろう。

 

取材を続ける中で、いつも心に抱いていた「誰がアパレルを殺すのか」という問題意識を、そのまま本のタイトルに付けた。だが、アパレル業界が不振に至った構図は、この業界だけに限った話なのだろうか。

高度経済成長の黄金時代の経験から抜け出し切れず、顧客が本質的に何を求めているのかを考え抜かないまま、「今はあれが売れている/流行っている」と聞けばすぐに飛びつき、各社横並びの「新規ビジネス」が雨後の竹の子のようにわいてくる――。

こうした、思考停止と縮小再生産は、斜陽と言われる多くの業界に当てはまるのではないだろうか。「アパレル」の部分を所属する業界に変えても、違和感を持たない方は少なくないはずだ

人は服を着て生活する。そんな身近な業界を深掘りして見えてきたのは、日本経済全体に当てはまる不振の構図だった。この本を手に取ってくれた、多様な業界に所属する様々な人達にとって、何らかの気付きを与え、背中を押すことのできる一冊となることを願っている。