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日本のアパレルを殺した「戦犯」は誰なのか

一年で数千店舗が閉鎖している現実

沈みゆくアパレル業界の実態を暴いた『誰がアパレルを殺すのか』が売れている。発売から内外で話題になり、たちまち三刷。本書の著者で、「日経ビジネス」の杉原淳一記者が、業界の事情を解説する。

ビジネスモデル、破綻

アパレル業界がかつてない不振に苦しんでいる。

業界を代表する大手4社(オンワードホールディングス、ワールド、TSIホールディングス、三陽商会)の合計売上高はここ数年、毎年1割ずつ減少している。不採算ブランドからの撤退や事業縮小も相次ぎ、2015~2016年度に4社が閉鎖した店舗数は合計1600以上。ワールド、TSI、三陽商会は希望退職も実施しており、その人数は1200人を超える。

デフレから脱却しきれず、消費を取り巻く環境はいまだ厳しいが、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の時と比べて、著しく消費が落ち込んでいるという実感は乏しい。2015年から足元までを見ても、日経平均株価は1万5000~2万円近辺で推移しており、1990年代前半のバブル崩壊以降で比較的、安定した時期と言えそうだ。

 

そんな中、アパレル業界は「過去に経験がない、深刻な不振」(大手アパレル幹部)を迎えている。「ビジネスモデル自体が破綻しかかっているのではないか」という問題意識から、雑誌「日経ビジネス」の2016年10月3日号で特集「買いたい服がない アパレル“散弾銃商法”の終焉」をまとめた。書籍『誰がアパレルを殺すのか』は、この時の取材班がさらに関係者への取材を深め、内容を大幅に加筆して完成したものだ。

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取材班が組まれる際、「アパレル業界の不振の構図を明らかにしたい」と自ら手を挙げたが、それには個人的な理由があった。

2006年秋。日本経済新聞の大阪経済部に所属していた筆者は、アパレル・スポーツ用品業界の担当になった。この大阪での取材経験の中で、大きく印象に残っていることが2つある。

1つ目は大阪市内の商店街を歩いていた時のことだ。ふと目にした店のワゴンに「ジーパン一本1000円」と書いてあった。手に取ってみると、多くの人が知っているであろう国内ブランドの商品で、生地や縫製の具合から考えても偽物だとは思えなかった。しかも、その店は古着屋ではない。

そうした店が「バッタ屋」と呼ばれていることを知ったのは後のことだが、「新品同然の有名ブランドの服が、定価よりもはるかに安い値段で売られている」という事実は、深く記憶に刻まれた。

2つ目は百貨店で買い物をしていた時のことだ。一緒に出かけた知人が、Aという店で青いニットを買った。その後、Bという別ブランドの店に入ったところ、一瞬、目の錯覚かと思うような光景を見た。先ほど知人が買ったのと同じニットが並べられていたのだ。

色はもちろん、デザインもまったく一緒。値段は微妙に違ったと記憶しているが、ブランド名の書かれたタグを外してしまえば、玄人でもA、Bどちらのブランドか見分けるのはほぼ不可能だっただろう。

記者として日々のニュース取材に追われる中、「なぜ、こんなことが起きているのか」を深く追求しきれないまま、アパレル担当を変わることとなった。しかし、それ以降も一連の出来事はずっと心に引っ掛かったままだった。