不正・事件・犯罪 週刊現代

大阪高裁で「逆転無罪」を連発する裁判官をご存じですか?

当たったら幸運!?覚醒剤も万引も無罪に
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64歳の福崎はラストスパートをかけている。

高裁の法廷は、第1回の初公判で証拠調べを行い、審理は行われないまま、2回目に即判決となるのが通例だ。だが、福崎の開廷表には、「審理」の文字が並ぶ。

6月8日、本誌は福崎のすべての法廷を傍聴した。3つの事件で判決公判があり、3件とも一審判決の破棄(うち1件は差し戻し)だった。

大阪高裁関係者は、「福崎さんは本当に仕事に厳しいし、熱心です」と口を揃える。
今月、一審裁判所の書記官を職権で法廷に呼び、異例の尋問を行ったのがその象徴だ。法廷記録が捏造された疑惑があった。福崎は厳しい表情で書記官を問い詰めた。

「書記官が虚偽の記録をしたとなると、身内の大失態です。福崎さんの厳格さを象徴する法廷でした」(高裁関係者)

法の正義がすべて――。福崎の心の叫びが聞こえてくるかのようだ。

「福崎さんは、『一審の判決と量刑が法に合致しているか、徹底して証拠を吟味しないといけない。被告にこの判断なら仕方がないと思ってもらえる判決を』と常々話しています。

逆転判決を出す裁判官には自信家が多いなか、公訴棄却のときでも『あれでよかったのかな』と判決を謙虚に振り返っていました」(同)

 

疑わしきは罰せず

元同僚のひとりは「福崎君は一貫した考えのもとで判断する。公訴棄却は割と珍しい判断だと思いましたが、その他の逆転無罪にしても、証拠の不十分さが目についただけでしょう。大阪高裁は扱う事件も多いから、たまたま逆転判決が続いているのではないか」と言う。

福崎と同じく最高裁調査官も務めた元東京高裁判事の木谷明が、福崎の真意を推察する。

「高裁の裁判官としては、控訴を棄却するほうが断然楽なんです。逆転無罪には、精神的にも肉体的にも、大変な労力がかかる。『定年も近いから楽をしたい』などと思ったら、そんなことはしない。

裁判員制度が開始されてから、一審の判決を尊重する姿勢を最高裁が打ち出してきています。しかし逆転無罪が難しくなれば、せっかく三審制をとっていても、無実の人を救済できなくなります。

福崎さんを動かしているのは、裁判官人生の集大成として『疑わしきは罰せず』という信念に忠実に、裁判をやりきりたいという気持ちではないでしょうか」

退官の日まで1ヵ月、己の信念のもとに生きる。ゴールに向けて、あと何回「被告人は無罪」の判決を下すのだろうか。

(文中敬称略)

「週刊現代」2017年6月24日号より