「ノー残業デー」を機に仕事の精度アップを図る

次に生産性の向上に役立つ仕事の基本を紹介しましょう。アメリカの経済学者、ピーター・ドラッカー氏の「To be effective, every executive needs to be able to dispose of time in fairly large chunks.(成果をあげるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。)」は、スキマ時間の活用や複数業務を同時並行することに躍起になっている私たちには目からうろこの言葉かもしれません。

生産性アップのためには小手先のスキマ時間の活用では無理だ、とドラッカー氏は断言しています。氏によると、ビジネスパーソンの毎日には時間を無駄に使わせる圧力がたくさんあり、時間を投入すべきと考えていた事柄に実際には投入できていないそうです。まずは自分の時間の使い方を正確に把握し、その上であらかじめ「時間の大きな塊(in fairly large chunks)」を確保すべし、と時間管理の重要性を説いています。

最後にグーグルCEO、サンダー・ピチャイ氏の言葉、「I don't multitask well at all.(私はマルチタスクを同時にこなすことが非常に苦手です。)」を紹介しましょう。ピチャイ氏は「会議中にラップトップやスマホを開き、メールを返信するようなことは私にはうまくできません」と告白しています。

自分の弱点を認識し、目の前の仕事に全力で集中することで一つひとつの仕事の質やスピードを高め、生産性を向上させているのです。

残業を減らすのに即効薬はありません。日々仕事の基本を積み重ねる「正攻法」しか道はないのです。「いつまでに何を終わらせる」という目標を立て、きちんと時間管理をして集中して取り組みましょう。そのことがわかれば、あとは実行あるのみです。

一流人の仕事の基本から私たちが学ぶことは多いと思います。彼らはスーパーマンのように見えますが、じつは私たちと同じように悩み葛藤する人間です。しかしごくあたりまえに思える仕事の基本を地道に実践し、徹底することで偉大なパフォーマンスをあげているのです。

一流人を憧れだけでとらえていても、彼らに追いつくことはできません。彼らとの距離を冷静にはかり、彼らも実践している仕事の基本に忠実になれば、その差を一歩一歩縮めていくことができます。

「ノー残業デー」の本質は、「残業のない日をつくる」ことにとどまりません。残業を減らすのはあくまでも通過点です。一つひとつの仕事の精度を高めて残業を減らし、うまれた余暇を使って人生を豊かにしていく。そこにノー残業デーの「真のゴール」があると私は考えます。働き方改革やノー残業デーはそのための良いきっかけとなります。これを機に一流人の仕事の基本を実践し、仕事の精度を高めていきませんか?

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とつか・たかまさ 1974年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス勤務後、ハーバード経営大学院(HBS)でMBA取得。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2007年、シーネクスト・パートナーズ(http://www.cnext.co.jp)を設立、代表取締役に就任。同社にて企業のグローバル事業開発およびグローバル人材開発を支援するほか、HBSのケーススタディ教材を活用した実践ビジネス英語プログラム「VERITAS」(http://veritas-english.jp)を主宰。著書に『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(2013年、朝日新聞出版)、『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか? 実践編』(2014年、同)があり、前者は20万部のベストセラーになった。最新刊は『世界の一流36人「仕事の基本」』