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『こち亀』でおなじみの亀有。元々は「亀なし」という地名だった

東京・地名の由来を教えます

まずはなぜ「亀」なのか

昨年9月、40年間休みなく続いた「週刊少年ジャンプ」の人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が惜しまれつつ連載を終えた。この漫画の舞台として、全国的にもすっかりお馴染みだった亀有。実はこの地名、かつては「亀なし」だったということはあまり知られていない。

亀有駅前のローラリーには両さんのブロンズ像と看板が飾られている

一番古い記録としては南北朝時代から室町時代初期に記されたと考えられている軍記物語『義経記』のなかに、源頼朝が隅田川を渡るという一文があり、そこに「亀無」という地名が出てくる。また、14世紀末から15世紀初頭の記録にも「亀無」とあり、16世紀中頃の記録には「亀梨」と記されている。

「亀なし」の「なし」は、「無」や「梨」ではなく、「成す」をルーツとしているという説もある。というのも、元々、この土地一帯は利根川が隅田川と葛西川に分岐しており、その川が堆積物をもたらしたことで、小高い丘になっていた。

その丘が亀の甲羅のような形状だったため、「亀の形を成している場所」と考えられ、「亀成す」に。そして「亀成す」が転訛し、「亀なし」になったという。

 

地名が亀有に変わったのは、1644年に江戸幕府が国絵図を作成したときだった。改称の理由には「忌み言葉」が関係している。これは受験シーズンになると「落ちる」とか「滑る」といった言葉、結婚式では「切れる」や「別れる」といった言葉が避けられるが、そういった縁起の悪い言葉を指す。

国絵図を作成した幕府の担当者は、「なし」という否定のイメージでは縁起が悪いと、亀有に変更したという説が有力。

ちなみにこのような験担ぎから正反対の呼び名に変えてしまうのは、決して珍しくはない。宴会などを締めくくる際、「終わり」「散会」「閉じる」など、不吉な表現を避けて、「お開き」という言葉を使っているのがよい例だ。

地名の由来は地理学者のみならず、歴史学や民俗学の研究者など様々な立場から諸説あげられている。起源を辿っていくと、その土地土地に歴史が埋まっていることに気づくはずだ。(井)

地図に秘められた東京歴史の謎

週刊現代』2017年6月24日号より