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誰も語らない、トランプ現象を生み出した「歴史の原理」とは何か?

<道徳感情>で激動の世界を読み解く

すべての悲劇の原因は<道徳感情>だった

人間の正しい心がこの世で起るすべての悲劇の原因だとしたら、我々はどうすべきなのか。迷宮に迷い込んで怒濤の展開に脳髄を掻き回され全身全霊の震えを体験しつつ、そんな究極の問いに答を見つけたいという物好きな方は、拙著『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか 冤罪、虐殺、正しい心』を読んでみていただければ。

そもそもは、あるひとりの刑事の生き様に心ふるわされて執筆をはじめたものだったのですが、筆者自身が迷宮の深みに填り込んで息も絶え絶えにもがいてるうち、どうしたものだか、冤罪や殺人のみならず、テロや戦争、革命や全体主義、果ては大恐慌に至る人間の歴史を動かす原理がじつは<道徳感情>であるなどという、大統一理論を打ち立ててしまうことになったのでした。

これだけでも大胆不敵なる所業でありますのに、重ねて剛毅なることに、それらの悲劇の克服法まで説いております。宗教や哲学、数学や民主主義というのは、数百万年の進化が人類にもたらした<道徳感情>から来る認知バイアスを克服するため発達したのです。

原理をきちんと理解したうえで、それらを的確に使いこなせば、人類を滅亡から救うこともできる。あらゆる分野の知見を縦横無尽に駆使して新機軸を打ち出した総合知の1冊となっております。

まさしく、ニーチェもカントもプラトンも超えた史上最高の偉業と称えるべき珠玉の書物、一読するやたちまちにして、この世のすべてをその手につかみ取ることができる、人間の叡智の到達点と云えましょう。

もっとも、アダム・スミスが250年前に、さらにはブッダが2500年前に、すでに解き明していたことをまとめただけなんですが。

最近はアダム・スミスの『道徳感情論』が流行っておりまして、世界中でいろいろと解説本のたぐいが出ているのですが、この真に恐るべき核心に触れているものがまったくありません。肝心のところを誰も理解できていないのです。

拙著『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』は、思わぬ顛末から『道徳感情論』の鍵を授かり、その扉を開いてしまったのでした。スミスさんはべつに鍵も扉も付けてないんですが、何故か最も大切な処が誰にも見えないようになっているのです。これこそまさしく、認知バイアスの為せるわざではあります。

道徳感情論』の閉ざされた扉が開いただけでも全人類への恩寵と云えますが、2500年もの間、誰ひとりとして理解できなかったブッダの恐るべき真の教えが、この<道徳感情>と認知バイアスの組み合わせからすべて読み解けるようになったのです。ブッダは人間の正しい心がもたらす惨劇とその克服法を、すでに完璧に見抜いていたのでした。

500ページ以上の本書では、シャーロック・ホームズ張りの神業的犯罪分析を披露して難事件を次々解決する世界初のプロファイラー吉川澄一や、アクロバチックなレトリックを展開して青年将校たちを扇動し国政を引きづり回したあげくに明治維新以上の革命を安保闘争の影で成し遂げた清瀬一郎、はたまた内務省と司法省の暗躍などなど、これまでどの歴史家にも知られていなかった昭和史の裏面を掘り起こすことで、この道徳感情理論の裏付けをしております。

しかしながら、なにせ大統一理論でありますから、過去だけではなく現代の世界情勢もすべてこれだけで読み解けてしまう。そういうわけで、この際やってしまおうというのが、この企画となります。

 

米国でトランプが大統領になったり、欧州で急進的な左翼や右翼が台頭したり、中東でイスラム国が暴れたり、はたまた金融危機といった、このところの激動に対する反応を見ていると、日本だけではなく、海外の専門家も現在の情勢や歴史の原理をじつはまったく理解していないのでないかと思えるようになったからです。

政治や経済などの簡単な分野だけではなく、腐女子はなにゆえ関係性に萌えるのかという人類に突きつけられた最大の難問にもこの理論で正解を出すことになりますが、とりあえずのはじまりはトランプ現象の読み解きから。