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英国がこれからもテロから逃れられない「複雑な事情」

欧州は過激主義との戦いに負けたのか?

英国を含む欧州で、イスラム過激主義に影響を受けた青年たちによるテロが続発している。

8日に総選挙が行われた英国は、選挙期間中に2度もテロに見舞われた。メイ英首相は早急にテロ対策の見直しを確約したが、オープンで自由な社会を維持しながらどれほどの効果を上げられるだろうか。

今や政府、捜査当局、国民はテロ発生を「新たな現実」として認識するようになっている。なぜ英国がこれからもテロを避けられないのかを探ってみた。

 

何とも言えない不安感と恐怖

欧州内のイスラム系テロに世界中が注目したのは、2015年1月のフランスの風刺雑誌「シャルリ・エブド」事件だった。編集室を武装男性らが襲い、その場で12人を射殺した。

これが1つの「ゴーサイン」になったかのように、同年秋にはさらに衝撃的なテロ事件が起きる。11月13日、コンサートが行われていたパリのバタクラン劇場内と近辺のレストランで襲撃事件が発生し、137人(実行犯7人を含む)が亡くなったのである。

翌年3月22日にはベルギー・ブリュッセルの地下鉄、空港での銃撃・自爆テロ事件(死者は実行犯5人を含む35人)が発生。7月14日、フランスは再びテロ攻撃にあう。ニースで花火の見物客にトラックが突入し、86人が亡くなった。実行犯は射殺された。

ドイツも攻撃の対象となった。12月19日、ベルリンでクリスマスに備えてショッピングを楽しんでいた人々をトラックがなぎ倒していった(実行犯1人のほかに11人死亡)。

英国でもテロが連続して発生するようになった。

特に今年に入ってから頻発している。3月22日、ロンドンのウェストミンスター議事堂に続く橋の上をトラックが暴走。その後、運転していた男性は議事堂前にいた警察官をナイフで刺し殺した(死者は警官らに射殺された実行犯を含むと5人)。

5月22日夜、英北部の都市マンチェスターで、米歌手アリアナ・グランデのコンサート終了直後、会場入り口付近で自爆テロが発生(実行犯1人を含む23人死亡)。6月8日の総選挙に向けた選挙戦の真っ最中の事件だった。

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それから2週間も経たない6月3日夜、ロンドンの中心地の1つロンドン橋上でワゴン車が通行人らに突っ込んでいった。ワゴン車から降りた実行犯3人はレストランが並ぶバラ・マーケットまで走り、数人に刃物で傷を負わせた。3人は駆け付けた警察官らに射殺された(犠牲となった死者は8人)。

実行犯はいずれもイラクとシリアに拠点を置く新興イスラム過激組織「イスラム国(IS)」の手ほどきを受けた、あるいは直接指令を受けたわけではないがISの思想に心酔した青年たちだった。

筆者は事件発生の翌日、ロンドン橋付近を歩いてみた。

犯行現場自体は捜査が続いていたため入ることはできなかったが、遠くから橋を眺め、バラ・マーケット付近にも行ってみた。近くの郵便ポストは郵便物を入れる口が封じられており、バス停は使えないようになっていた。

ロンドン橋に行くために地下鉄の駅バンクまで行ったのだが、事件のために閉鎖状態となったロンドン橋駅を電車が通過していったとき、何とも言えない不安感と怖さを感じた。