Photo by iStock
政治政策 学校・教育 行政・自治体 政局

「もう一人の文科省キーマン」が語る加計学園問題の本質

「ノンキャリの怪物」が初告白

安倍総理の「お友達」が利権を貪ったのか。それとも、規制緩和のために必要な政治決断だったのか。文科省にはいまだ世に知られていない、獣医学部開設の裏側を知り尽くす男がいた。加計学園問題を継続取材する小川匡則記者の特別レポート。

大物官僚にして加計学園の内部者

「獣医学部の招致は、2006年くらいからずっと進めていた話ですよ。『森友学園と昭恵夫人』の関係と同じように『加計(孝太郎)さんと安倍総理は腹心の友』なんて話になっていますが、そういう私情がどうこうよりも、日本の獣医学教育をどうするかという議論をもっとしてほしい。(加計学園のほかに獣医学部開設を目指していた)京都産業大学を落とすために特区制度を利用したと言う人もいるけど、そんなことはない」

こう語るのは、文科省OBの豊田三郎氏(69歳)。詳細は後述するが、文科官僚の中でも渦中の「加計学園」と関係の深い人物として、省内で知らぬ者のない大物だ。

豊田氏は、昨年5月30日に加計学園理事に就任した。だが今年1月25日、就任から1年を待たずして理事を辞任した。

 

加計学園に再就職した文科省OBといえば、同学校の系列校である千葉科学大学学長の木曽功氏が内閣官房参与も務めていることから「総理のお友達」として大きな注目を集めた。また周知の通り、前川喜平・文科省前事務次官が起こした「前川の乱」は、いまだに永田町と霞ヶ関を揺るがしている。

しかし、同じ文科省OB、しかも加計学園の「インサイダー」でもあった豊田氏のことが、マスコミで話題に上ることはほとんどなかった。

豊田氏は加計学園の加計孝太郎理事長を伴い、昨年8月23日に山本有二農水大臣に、9月6日には松野博一文科大臣に、「挨拶」に行ったことが明らかになっている。しかも松野文科大臣にはこのとき、加計学園側から「四国に獣医学部を作る」という構想が伝えられた、との報道も出た(6月12日、TBS。加計学園は事実関係を否定している)。

加計学園の獣医学部新設が決まったのは昨年11月。文科省の内情に精通する豊田氏が、政権内の担当閣僚に加計氏を引き合わせたのではないか、と疑われても仕方のない行動だ。この事実は国会でも取り上げられ、豊田氏は参考人招致要求を受けている(のちに与党の反対で却下された)。

ノンキャリの怪物

これまで注目されてこなかった豊田氏こそ、加計学園と文科省をつないだ「ミッシングリンク」ではないか――そう考えた筆者は豊田氏を自宅で直撃した。意外にも、氏は筆者を招き入れると、穏やかな口調で取材に応じた。

「私は長いこと国会担当をやっていたので、与野党問わずいろんな議員さんと仲良くなった。だから、民主党政権時代でも旧知の人が(文科)大臣になったら会いに行っていました。山本農水大臣は私が高知大学に(出向し、庶務課長として)行っていた頃に県会議員をされていて、そこからの付き合いで、今回たまたま農水大臣だったということ。松野大臣と山本大臣に加計さんを紹介したことは事実ですが、(大臣就任の)お祝いの挨拶をしただけです。そんな場でお願い事をするわけがない。まるで陳情に行ったみたいに思われるのは本意ではありませんね」

「ノンキャリの怪物」——豊田氏にはこんな形容が似合う。新潟県出身、1966年に埼玉大学の職員として就職し、76年に当時の文部省に出向。主に国会連絡室などで国会対応業務に携わった豊田氏は、高卒のノンキャリながら、その高い能力を買われて文部省に移り、以来議員からも官僚からも絶大な信頼を得てきた。

「文教族にとっては超大物の役人で、知らない人はいない存在だった。圧倒的に仕事ができるし、人柄が良くて人付き合いが抜群にうまかった。特に、国会議員との人脈は文部省随一だった」(元文教族議員秘書)。