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「武器輸出大国」を目指す安倍政権の野望と現実

狙いは「世界の列強入り」…?
古賀 茂明 プロフィール

「列強」を目指す安倍首相

古賀: 出版されたばかりの日本中枢の狂謀』にも書きましたけど、安倍さんがやりたいこと、願望というのがあって、それはたとえば炭素繊維を売りますとかレーダーの部品を売ります、というようなことではないんです。それはたとえていえば、「町人国家・日本が商売で軍事大国にモノを出しています」という話。安倍さんが本当にやりたいのはそうではなくて、列強としての地位を確立することだと思う。

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僕の「列強」の定義は、経済力だけではなくて、軍事力というのを背景にして、世界の秩序、ルール作りに影響力を与える国のことで、それによって自分の国の利益を確保し、増進していく――これが列強です。その列強のリーダーに自分がなるんだ、と安倍さんは考えているのではないか。

望月: そういう意味では、日本は経済大国にはなりましたけど、軍事力はまだまだ小さい方ですから、列強ではありませんね。

古賀: 少なくとも、軍事力で世界に影響を与える国ではない。つまり安倍さんが目指す本当の意味での「列強」にはなっていない。

以下は仮説なんだけれど、安倍さんの考える「列強」にたどり着くためには「武器は全部アメリカにお願いします」ではなくて、世界の武器産業の中で、日本の武器産業が、いくつかの分野でリードする立場にあるようにしたいのではないか。

少なくともアジアの国々が日本の武器に依存する、という形を作り出したい。武器に依存させてしまえば、軍事的にも依存する関係になりますからね。武器というのは単独で相手の国に行ってお終い、というわけではなくて、システムとして行くものです。

 

望月: メンテナンスをしたり、補修をしたり、点検したり…と関係は長く続きますよね。アメリカが日本と築いているような関係を、日本が東南アジアの国々と、というわけですね。

古賀: 安全保障という点で、その国のシステムが部分的にでも日本に依存するということになります。そういうシステムとして売りたいから、センサーとか、炭素繊維とか、それだけではダメなんですよね。

今話したのは仮説ではあるんだけど、でもそういうふうに考えると理解できるでしょう。部品を持って行ってそれですごく儲かればいいじゃないか、とはならないわけです。

望月: なるほど。そういうイメージが安倍さんの中にあるのですね。

古賀: イメージ、というよりもう少し具体的です。最終的な目標といった方がいいかもしれません。アメリカと並ぶところまではいけないかもしれないけど、アメリカに次ぐ地位になりたい。日本は経済力としては、少なくともイギリスやフランスよりは大きいわけです。でも軍事的には決してプレゼンスは高くないですからね。

古賀茂明(こが・しげあき) 1955年、長崎県に生まれる。1980年、東京大学法学部を卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2008年、国家公務員制度改革推進本部事務局審議官に就任し、改革を次々と提議。2009年末に経済産業省大臣官房付とされるも、2011年3月の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を受け、4月、日本で初めて東京電力の破綻処理策を提起。その後、経産省から退職を勧告され、9月に辞職。その後、大阪府市エネルギー戦略会議副会長として脱原発政策を提言。15年、日本外国特派員協会「報道の自由の友賞」受賞。最新刊は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ほか、ベストセラーになった『日本中枢の崩壊』『原発の倫理学』(以上、講談社)、『官僚の責任』『利権の復活』(以上、PHP新書)、『国家の暴走』(角川新書)など。

望月: 官邸はそういった壮大な絵を描いていますが、各企業はやはり戸惑っています。

実際、企業の軍需に占める割合はそれほど大きくありません。日本の防衛企業の防需依存度を見てみると、最多の川崎重工が23.9%、最大手の三菱重工が13.5%、上位9社では平均で7.7%、防衛企業全体では5%程度です(平成27年度)。

ただ、本の刊行後ですが、たとえば三菱電機などはかなり武器輸出に前向きになっている印象を受けます。

長距離空対空ミサイルに「ミーティア」というのがあります。このミサイルは、強い電子妨害を受ける環境でも遠距離への攻撃力を持つのですが、これに使われる窒化ガリウム(GaN)という物質を三菱電機は作っていて、インタビュー取材でこれについて尋ねても、ノーコメントを貫いています。三菱電機は部品で勝負している会社だと思いますが、このミサイルはイギリス、フランスなど先進6か国の空軍に配備される予定で、経済的なメリットは大きいでしょう。

三菱電機は2年前にフランスで行われた武器展示会「ユーロサトリ」にも参加しました。この分野で市場を見出したという感じで積極的になっていると感じますね。