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妻が「使えない」のではなく自分が「妻を使うのがヘタ」と発見した日

されど愛しきお妻様【12】

ルポライターの鈴木大介さんと「大人の発達障害」であるお妻様の楽もあれば苦もあった18年間を振り返る本連載。リハビリを経て退院した鈴木さんですが、会話がうまくできなかったり、感情の起伏が激しくなってしまったりと、高次脳障害の影響に苦しむ日々が続き…でもそんな鈴木さんを精神的に支えるお妻様。今回は2人の夏の日のあるエピソードをお届けします。

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まずは大量の本を整理

多くの気付きや心のお膳立てが必要ではあったけど、あの日が大きな転機だったのだと思う。8月序盤、退院して10日ほど経ったその日の朝も、僕の1日は大掃除から始まった。
 
退院前から漫画原作の仕事や闘病記の元になる原稿の執筆には戻っていたが、想像以上に辛い高次脳機能障害でまともに話せるのがお妻様ぐらいという状況では、本業である取材記者の仕事に戻れるのはいつになるか分からないし、一生戻れないかも知れない。

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幸いにも週刊連載の漫画原作仕事は担当編集が千葉の陸の孤島な我が家まで毎週打ち合わせに来てくれるというし、病前から書き進めていた書籍仕事もまだある。ならば自宅でやれる執筆業務をしつつ、自宅と夫婦関係の環境調整を試みようというわけだ。
 
前日には、階段の途中の踊り場に山盛りに積み重ねられていた「2階の仕事部屋に持っていこうと思っていた本」や、寝室の押し入れに入っていた「いつか見返すはずの資料書籍」から本当に必要な本を抜粋し、残りの(ほとんどの)本を玄関前の廊下に積み上げておいた。

この日の朝は、茶の間の押し入れや収納スペースの大半を占拠していた雑誌や書籍や漫画類に手を付ける。ここにお妻様の私物を入れる収納を作ろう。

 

それにしても引っ張り出してみると、膨大なゴミ本だ。多くは取引先の編集部から送られてくる献本だが、その殆どは送られてきた大型封筒から出されてもいない。

資料として購入した書籍の中には、大量の付箋が貼られているにもかかわらず、中身の内容が何が書かれているかさっぱり思い出せないものも多い。この家に引越ししてきてから3年半、段ボール箱に入りっぱなしのものもある。

こんな不要なものでお妻様の収納場所を奪っておきながら「机の上や床に物を出しっぱなしにするな」と小言を繰り返してきたわけだ。

1冊1冊、反省を込めながら、まずは古本屋で売れそうな本と廃棄する本にわけ、それぞれサイズごとに分けて段ボール箱に詰めていく。急いでやろうとするとパニックを起こしそうになるので、ゆっくり、ゆっくり。