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タモリと名古屋にまつわる「因縁」と「呪縛」

今夜『ブラタモリ』で歴史的和解が…?

NHK総合の人気番組『ブラタモリ』が名古屋にやって来る。きょう6月10日と来週17日の放送では、タモリが名古屋市内を歩きながら、町のなりたちを明らかにする。

名古屋を揶揄してきたタモリ

今回の名古屋編の制作にあたっては、名古屋市が全面的に協力したという。地元紙『中日新聞』も、5月に情報が解禁されると、カラーページで大きく伝えた(2017年5月20日付朝刊)。

また、名古屋市内では放送を前に、名古屋城に向かう市営の「なごや観光ルートバス」が『ブラタモリ』バージョンにラッピングされ、繁華街・栄に建つテレビ塔の夜間のライティングにも、タモリのアニメが登場するなど、歓迎ムード一色だ。

『ブラタモリ』ではいままでに、札幌、仙台、横浜、京都、大阪、広島、福岡といった主要都市がとりあげられてきたが、ここまで盛り上がりを見せたのはおそらく名古屋が初めてではないか。

これは、かつてタモリが名古屋弁を真似て、名古屋人をからかうようなネタを盛んにやっていたこと(当然名古屋人には賛否両論あった)を考えると不思議な気もするし、逆に、そういう因縁があるからこそとも思える。

ネットでも、『ブラタモリ』名古屋編の放送決定を、驚きを持って受け止める声が目立った。なかには「歴史的な和解」などと冗談めかして歓迎する人たちがいる一方で、「タモリが名古屋についてどんなことを言っていたのか忘れたのか」といった、否定的な意見も少数派ながら見かけた。

 

これら反応は、まるで国家や民族間での歴史認識の問題のアレゴリー、パロディを思わせる。そもそもタモリその人が、中国語や韓国語のモノマネなど、ときにデリケートな問題も笑いにとる芸風で世に出てきたことを思えば、なかなか興味深い。

とはいえ、タモリが名古屋を揶揄するネタをテレビやラジオで展開していたのは、もう40年近くも前の話である。リアルタイムではタモリが名古屋をネタにするのを見たこともない世代も増えている。私(愛知出身)もそのひとりだが、それでも、地元メディアや親などを通して、タモリとの因縁は伝えられてきた。

それだけ、名古屋にとってタモリの存在は大きいといえる。この記事ではあらためて、両者の関係を振り返ってみたい。

デタラメ外国語と同一の「楽しみ」

そもそもタモリはなぜ名古屋に興味を持ったのか? これについては、タモリがもっとも盛んに名古屋をネタにしていた時期に『中日新聞』がインタビューで訊ねている。それによれば、早稲田大学在学中、名古屋出身の親友がおり、彼の家に居候していたのがきっかけだという。

《そこに、名古屋人が集まってきて、友達が何人かできました。見てると、おもしろいんですね、名古屋人は。前から興味は持ってたんですけどね》(『中日新聞』1981年12月7日付市民版[名古屋市内版])

タモリが名古屋弁に、その独特のイントネーションから興味を抱くようになったのもこのときだ。同じインタビューでは次のように持論を展開している。

《名古屋弁ってのは、日本語の中で独特の地位にあるんじゃないですか。例の“みゃあ、みゃあ”言うとこなんか――。英語にある“※”のアイマイ発音ですよね》

※はaeを組み合わせた英語の発音記号

《あのオ、古い日本語には、例えば“い”でも“え”でも、二つの字(ゐ、ゑ)があるでしょ。あれ、もともと発音が違うんですよね。今じゃ、一緒の発音になってますが――。そうした名残りが名古屋弁にはあるんですね、ウン》

音から名古屋弁の面白さを見出したというのが、学生時代にはモダンジャズに熱中していたタモリらしい。思えば、タモリがデビュー当時より持ち芸にしていたデタラメ外国語、あるいはデタラメ日本語の「ハナモゲラ語」からして、言語を意味から切り離し、純粋に音として楽しむものであった。

ちなみに今回の『ブラタモリ』名古屋編でも、タモリが「自分は名古屋弁が得意だ」と実際に話してみたり、得意になった理由などを語る場面があるというから、楽しみだ。