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不正・事件・犯罪 政局 週刊現代

「引き裂かれた文科省」現役官僚たちの胸の内

官邸が怖くて口には出せないけれど…

ある後輩が意を決して言う。前川さんは本当に、ウソのつけない人なんです――。

彼らも前川氏のように、「黒は黒だ」と素直に言えれば、どれだけ楽になるだろう。「現役」である彼らにそれはできない。

 

佐川になるな、前川になれ

「今はただ、悲しいです。尊敬する先輩が、全国民から安倍政権の『政敵』であるかのように見られている。毎日、前川さんが『悪人』であるかのように報じられている。それが悲しい」

こう吐露するのは、文部科学省の中堅キャリア官僚だ。彼はこれまで、前川喜平・文部科学省前事務次官とも一緒に仕事をしてきた。

「前川の乱」をめぐって、文科官僚たちの心はいま、千々に乱れている。

前川氏は、安倍政権に対して堂々と弓を引いた。安倍政権が続く限り、文科省が「政敵」扱いされることは、もはや避けようがない。

だが――詳しくは後述するが、文科省の、とりわけ上層部にとって前川氏は、「文科の良心」といわれるほどの大きな存在だった。

その前川氏を官邸は、菅(義偉)官房長官は、さんざんに罵り、蔑み、自らの意のままに動く一部マスコミを利用して叩き潰そうとした。

それは、文科省の存在そのものを否定するのと同じだった。

「まさか菅官房長官が、前川さんのことをあんな風に言うなんて……聞きたくなかった。読売新聞の『出会い系バー』の記事についても、報じられた(5月)22日には、(省内では)『このタイミングで、おかしい』『どうしたんだろう』と、皆言い合っていたんです。

決して仕事場で口には出せませんが、われわれは今、不安の中で働いています。これからいったい、何を信じて働けばいいのか分からなくなってしまったからです」

菅義偉官房長官Photo by GettyImages

官僚たちのオモテの能力や評価だけでなく、公安警察や内調(内閣情報調査室)を縦横無尽に用いて、ウラの行状まで調べ上げる。意に沿う者にはポストをもって遇し、刃向う者には冷や飯を食わす。

菅氏が事実上取り仕切る「内閣人事局」で、官僚の人事権を一元管理するのが、官邸のやり方である。

霞が関を支配するのは、このオレだ――菅氏の発する有形無形の圧力。今回、文科省はその見せしめになった。別の文科省ベテランキャリア官僚は、葛藤している。

「前川さんは、新人職員どころかバイトの子にまで、積極的に話しかけてあげたり、ざっくばらんに話ができる人です。別に『前川派』のような派閥があるわけじゃない。強いて言うなら、文科省には『前川派』しかないと言っても過言ではないほど慕われていました。

しかし今、前川さんの肩を持っていることが官邸に知れれば、官僚人生は終わる。

『(森友スキャンダルで意味不明な国会答弁を繰り返した、財務省理財局長の)佐川になるな、前川になれ』なんて言葉が出回っていますが、実際には私を含め、前川さんのあとに続く勇気がある官僚はゼロと言っていい。部下たちに迷惑がかかることも分かっていますから」