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赤ちゃんは「マイナス1歳」のときに空の上で自分のママを決めている

ルポ「胎内記憶」の不思議【後編】

ノンフィクションライターの川内有緒さんが現代ビジネスに初登場!今回は「胎内記憶」についてのルポルタージュを執筆していただきました。気になる前編はこちらからどうぞ!

恐竜の時代は空の上に

胎内記憶のことを以前から知っていて、自分から子どもに質問してみたという人もいる。一級建築士で、二児の母であるとりやまあきこさん (38歳)。
 
あきこさんは、映画の『うまれる』(豪田トモ監督作品)を見て以来、言葉を話せるようになったら胎内記憶について聞いてみようと考えていたそうだ。 
待望の瞬間は、第一子の櫂くんが3歳の頃にやってきた。

とりやまあきこさん 写真:著者提供

その夜あきこさんは、寝かしつける布団の中で、ふと「どうしてお父さんとお母さんのところにきたの?」と聞いてみた。すると櫂くんは、自然な口調で「だって、お母さんの全部がよかったから」と答えた。それを聞いて、嬉しくて感極まったというあきこさん。
 
さらには、こんな驚くべき話が続いた。

「生まれる前はね、雲の上にいたんだよ。雲の上から見てお母さんがいいなと思って決めたんだよ。ずっと昔、恐竜の時代には、お母さんも一緒に雲の上にいたんだよ」
 
予想を上回る話の展開に、あきこさんは「お父さんも一緒にいたの?」と聞き返した。

「ううん、お父さんは一緒にはいなかった。お父さんは恐竜の上にいて、それを見てたんだ」
 
その辺の信ぴょう性はもはやミステリーだが、それはさておき、あきこさんには聞いてみたいことがあった。それは、生まれるタイミングのことだ。
 
櫂君が生またのは、予定日より3週間も早かった。

「それまで夜中まで仕事をするほど忙しくて、ようやく正産期に入ったので、産休に入りました。ようやくベビー服でも縫おうかなと思った時に、陣痛がきたんです。初産は遅れると聞いていたので、びっくりしました」

 

分娩は、いわゆる難産というほどではないが、安産でもなかったそうだ。

「痛くて、痛くて、こんなの聞いてないよー! という感じでしたね。もう衝撃的に痛くて、みんな時間が経つと痛みを忘れると言っていたけど、私は絶対に忘れないと思いました」

その長くて辛い陣痛を思い出しながら、あきこさんは櫂君に聞いてみた。

「ねえ、どうしてあんなに早く生まれてきたの?」

すると、こんなはっきりとした答えがかえってきた。

「お母さんの顔が早く見たかったからだよ! 生まれた時はね、僕も痛かったんだよ、でもお母さんが頑張ってたから、僕も頑張ったよ」
 
そう言われると、確かに思い当たる節があった。