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テロ

ドゥテルテ大統領の「大誤算」まさかISがこんなにしぶといとは…

戒厳令下の戦闘が終わらない

フィリピンが熱く燃えている。南部ミンダナオ島ではドゥテルテ大統領が5月23日に戦後3回目となる戒厳令を布告、地方都市マラウィではイスラム系テロ組織と国軍部隊との激しい戦闘が続いている。

6月2日には首都マニラ南部ニノイアキノ国際空港近くのショッピングモールにあるカジノで男が銃を乱射し放火、37人が死亡する事件も起きている。

戒厳令下の戦闘についてドゥテルテ大統領は、「ミンダナオ地方にいるのはイスラム国(IS)のメンバーである」と明言し、フィリピンのイスラム武装勢力との武力衝突というレベルではなく、ISという国際テロ組織との戦闘だという認識を示した。

カジノでの乱射・放火事件もフィリピン警察当局は「強盗事件」との見解ながらも、ISが犯行声明を出す事態となっており、フィリピンはISの新たな拠点になりつつあるといえそうだ。

こうした事態に東南アジア諸国連合(ASEAN)や米国も、ISの東南アジア浸透を阻止する「テロとの戦い」のため、フィリピン支援を具体化させている。

マラウィでの戦闘〔PHOTO〕gettyimages

戒厳令布告で早期鎮圧を目指す

フィリピン国軍は5月23日、ミンダナオ島西部南ラナオ州の州都マラウィで反政府イスラム武装組織「アブサヤフ」の幹部、イスニロン・ハピロンの潜伏先を急襲する作戦を始めた。すると、ミンダナオ島で最近勢力を急拡大させていた武装組織「マウテグループ」がアブサヤフに加勢、国軍との激しい銃撃戦に発展した。

両組織はマラウィ市内の病院、教会、学校などを次々と占拠、一部に放火したり、刑務所を襲撃して囚人を解放したりしながら占拠エリアを拡大。キリスト教関係者や一般市民を人質に取り、処刑するなど残酷な手口からISの影響が懸念され、戦闘で死亡した武装組織のメンバーにマレーシアやインドネシア人が含まれていたことから「外国人が加わった戦闘集団」との見方が強まった。

こうした事態を訪問先のロシアで報告されたドゥテルテ大統領は直ちにミンダナオ島とその周辺に戒厳令を布告した。

 

フィリピンでの戒厳令は、1972年のマルコス大統領時代、2009年のアロヨ大統領時代に次いで第2次世界大戦後3回目。これにより地方自治権が一時的に軍や警察などの治安組織に移され、夜間外出禁止、令状なしの逮捕や身柄拘束、抵抗者への発砲が可能となる。期限は60日間で延長や地域の拡大も可能だ。

布告後48時間以内に議会への説明義務があるため、ドゥテルテ大統領は日程を切り上げてロシアから帰国した。

帰国後の5月26日、戒厳令下のイリガン市で兵士を前にしたドゥテルテ大統領は「ISはすでにフィリピンにいる」との見方を明らかにしたうえで、「テロリストに告ぐ。今ならまだ対話を通じて事態は打開できる。だが停戦の覚悟がないなら、戦争になるまでだ」と、対話を促す余裕を見せた。

戒厳令で増派された国軍が地上や空から攻撃することで早期鎮圧が可能、とドゥテルテ大統領はこの時点では内心思っていた節がある。