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監査法人よ、いますぐ東芝の歴代経営者を訴えよ

本当に、「騙された」のだったなら

東芝の監査法人に賠償請求

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、東芝の監査を担当していた新日本監査法人に、約35億円の賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたことが明らかになった。

粉飾決算の表面化によって東芝株が大幅に下落、同社株を保有していたGPIFが損害を受けたというのが提訴理由。東芝による「有価証券報告書への虚偽記載」(粉飾決算)を見逃していた監査法人に責任があるとして、賠償を求めたのだ。5月17日付けで、資産管理を委託している信託銀行を通じて訴えたという。

2015年春に発覚した東芝の不正会計問題では、同年12月25日に金融庁が東芝に対して73億7350万円の課徴金を課している。有価証券報告書等に対する虚偽記載、つまり粉飾決算が行われたと金融庁が認定して、行政処分を行ったわけだ。

それと同時に、監査を担当した新日本監査法人に対しても、その粉飾を見逃し、決算書は正しいとする「適正意見」の監査証明書を出したとして、「虚偽証明」の責任が問われ、21億1100万円の課徴金が課せられた。つまり、粉飾決算があったことは金融庁によって事実認定されているわけだ。

 

投資家であるGPIFが監査法人に賠償を求める理屈は、「監査で問題ないという決算書を信用して株式を買ったのに、実は粉飾していたということが分かって株価が急落、損失を被った、その責任の一端は監査法人にある」というものだ。監査は本来、投資家の利益を守るために設けられた制度だから、その監査に問題があり、損失を被ったのであれば、損害賠償を求められるのは当然のことだ。

一義的には粉飾をした会社や経営者に損害賠償を求めるケースが多い。GPIFは東芝自体にも計約132億円の損害賠償を求めて2件の訴訟を起こしている。もっとも、粉飾決算の場合、企業自体が破綻して賠償できる財力がなくなってしまう例も少なくない。このため、欧米では監査法人が訴えられる事がしばしばあるわけだ。

紛れもない粉飾、責められるのは当然

金融庁が粉飾の事実を認めているわけだから、粉飾の有無を裁判で争うことはない。監査法人として十分な責任を果たしていたかどうかについても、金融庁から行政処分を受け、監査法人も課徴金を納入している以上、「罪を認めた」ことになるわけで、賠償責任を回避するのはなかなか難しい。新日本監査法人が敗訴して、賠償が命じられる可能性は低くない。

新日本監査法人にとってさらに厄介なのは、訴訟を起こすのがGPIFだけに限らない、ということだ。東芝の大株主には日本生命保険や第一生命保険など大手保険会社や銀行などが名を連ねる。保有株に大きな損失が発生しており、その賠償を求めて監査法人を訴える可能性があるのだ。
 
特に保険会社の場合、機関投資家として保険契約者の利益を最大化する責務を負う。フィデューシャリー・デューティーと呼ばれるものだ。

日本では安倍晋三内閣の成長戦略の一環として、あるべき機関投資家の姿を示した「スチュワードシップ・コード」が導入された。保険会社は、取引先としての東芝との関係よりも、保険契約者の資金の投資先としての東芝との関係がより重視される。つまり、保険会社は保険契約者の利益を最大化しなければならない責務を負う。