東京五輪特別塗装モデルを前に笑顔のANA(HD傘下の事業会社)・平子裕志社長 photo by gettyimages
企業・経営 オリンピック

「苦節12年」ANAが再び日本の空を制する日

JALが守りを選ぶなか首位奪還が目前

ANAは攻め、JALは守る

ANAホールディングス(ANAHD)が、オリンピックイヤー(2021年3月期)に日本航空(JAL)から12年ぶりの首位奪還を果たすかもしれない。

このほど出揃った両社の中期経営計画を比べると、ANAHDが同期の営業利益の目標を2000億円としたのに対して、JALは1800億円を目指しており、JAL破たんの前年度(2009年3月期)以来初めて、ANAHDがJALを上回る可能性が高まってきたのだ。

4年先の目標を論じるのはナンセンスだと笑う読者もいるかもしれない。

両社の経営計画を精査すると、国際・国内両路線でFSC(従来型航空会社)とLCC(格安航空会社)の2つの事業を展開するANAHDが、両輪を駆使して増収と経営効率化を目論む「全方位攻勢」を採る一方、JALはかつての国策支援を機に手に入れた世界最高水準の経営効率を堅持する「守り」の経営を採用している。

 

空の覇権に結びつくのは、いったいどちらの戦略なのか探ってみよう。

リーマンショック以前の日本の空では、お化粧決算が実態をわかりにくくしていたものの、国策会社の座にあぐらをかき放漫経営を続けて財務体質悪化に歯止めがかからなくなったJALと、常にチャレンジャーとして挑戦してきたANA(現ANAHD)の格差が鮮明になり始めていた。

JAL破たんの前年で、日本経済がリーマンショックに揺れた2009年3月期の営業損益を見ても、逆風に耐え切れず508億円の巨額赤字に転落したJALと、対照的に75億円の黒字に踏みとどまったANAの地力には、大きな差があったのだ。

この力関係を一変させたのは、会社更生法を適用したJALの国策救済だ。当時のことや、その政策的欠陥については、2012年に上梓した拙著『JAL再建の真実』(講談社現代新書)を参照してほしい。

公的資金3500億円の資本注入や金融機関による5215億円の債権カット、3600億円のつなぎ融資、9年間で4300億円の税制優遇、資産再評価による460億円の償却負担免除といった数々の国策支援。

さらには、類を見ない人件費の削減や路線の見直しを含む大胆な自助努力が功を奏し、JALは当時の独ルフトハンザなどと肩を並べる、世界トップクラスの優良な財務体質と強固な収益力を手に入れた。

結果として、JALは、営業利益で毎年1600億~2000億円を稼ぎ出す高収益会社に生まれ変わった。自力で収益の強化を目指したANAHDとの格差は大きく、2014年3月期のように、同社の営業利益が659億円とJALの4割以下の水準にとどまった時期もあった。

4年後には首位を奪還

だが、2017年3月期にはその格差が大幅に縮小し、ANAHDはJALの8割5分を超す水準まで詰め寄った。

人件費の引き上げなど流行りの働き方改革や、これまで抑えてきたIT投資を先延ばしできず、JALの営業利益が前期比18.6%減の1703億円になったのとは対照的に、ANAHDではFSCとLCCへの経営多角化などが本格的に寄与し始めて、6.7%増益の1455億円と2期連続で過去最高益を更新した。

両社が4月末に発表した2021年3月期を最終年度とする中期経営計画は、一段と経営戦略の違いを際立たせるものになっている。

まず、数値目標を比べると、ANAHDは売上高が2兆1600億円(2018年3月期会社予測比13.1%増)、営業利益が2000億円(同33.3%増)と大幅な増収増益を目指すのに対し、JALは植木義晴社長が記者会見で口頭で示したものだが、売上高が1兆5000億円(同12.0%増)、営業利益が1800億円(同26.7%増)と控えめだ。

この営業利益の水準は、ANAHDが過去最高になるのに対し、JALは2012年3月期(2049億円)、2013年3月期(1952億円)、2016年3月期(2091億円)に次ぐ過去4番目の水準にとどまる。

結果として、JALが更生手続き中で決算を公表しなかった時期も含めて、ANAHDが12年ぶりにJALから首位を奪還する可能性が高まっているのだ。