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日本の女性市場を席巻する「大ヒット事業」はいかにして生まれたか

売上369億円、でも上場はしない

「漫画喫茶ゲラゲラ」をはじめ、ホットヨガスタジオ「LAVA」やバイクエクササイズ「FEELCYCLE」など、多くのヒット事業を生み出してきたインキュベーション企業、ベンチャーバンク。

2017年3月期の売上高は369億円に上り、05年の創業から成長を続けているが、収益化した事業をホールディングス化(子会社化)するのではなく、並列の関係で"分社化"する、また株式公開を行わないなど、独自の経営方針を採っている。

同社の代表取締役会長・鷲見貴彦氏にその理由と、女性市場を席巻するヒット事業を送り出すポイントについて聞いた。

鷲見貴彦氏

子会社化ではなく分社化

――軌道に乗った事業を子会社化するのではなく、ベンチャーバンク本体と並列の関係で「分社化」するのは、どういった理由からでしょうか。

経営者からすると、生み出し育てた事業がほかの人の手に渡る、というのは本来、嫌なことだと思います。また社内の一事業として管理し続けることや、ホールディングス化することには、税務上のメリット、効率的なよさもあるでしょう。

しかし、収益化した事業は、新会社として独立性を高めたほうが、飛躍的に成長、発展させることができると考えます。

例えば社内の一事業、あるいは子会社となると、給与体系を含めたさまざまなルールにおいて、全体との整合性をとる必要が生じる。親会社によるトップダウンの構造――つまり、拡大する事業の「現場」をよく知らない人が決定権を持つことになり、見当違いの方向に進みかねません。

 

――近著i人経営(日経BP)では、事業への資金の回り方についても言及されています。

そうですね。子会社化すると、収益が親会社の新規事業への投資に回されるなど、独立していれば可能だった自己投資、成長と拡大の機会が阻害されることもあります。また、親会社やグループ企業との関係から、本当に理にかなった他企業との協業に踏み出せない、ということもあるでしょう。

新しいサービスを生み出し続ける"インキュベーション・カンパニー"として、収益化した事業にそうした足かせをつけず、発展させるために分社化を考えました。その際に出資するのはベンチャーバンクではなく私個人で、経営判断は当然、各会社のトップが行っています。

――2016年10月、実際に会社分割が行われ、LAVA、FEELCYCLE、ネットカフェ事業、人材開発事業がそれぞれ新会社として独立しています。現在までの手応えはどうですか?

想定どおり、それぞれの事業に合ったルールをつくり、順調に成長を続けています。新会社の社長はそれぞれの事業部でトップを務めていた社員ですが、やはり社長になることで責任の所在も明確になり、意識が変わりました。

4人のうち3人は40歳前後で、このように若くして社長になることができる仕組みがあることは、ベンチャーバンクという企業の価値を高めてくれると考えています。特に成長意欲のある人にとっては、魅力的なことではないでしょうか。

一般企業で考えると、普通に入社した社員が社長になるのは極めて難しいことですが、アイデアと努力次第で、それが可能になるのです。