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医療・健康・食 ライフ 週刊現代

60歳を過ぎての「耳かき」は重大な疾患を引き起こす

風呂上がりの綿棒もやめたほうがいい

週に一度や二度はついやってしまう耳かき。気持ちいいし健康にもいい、一石二鳥の暇つぶしと思いきや、それは大間違い。特に高齢者の場合、下手をすると、重大な疾患を引き起こすこともあるのだ。

黄色い膿が出てきた

「一日1回、風呂上がりに綿棒で耳をキレイに掃除するのが私の日課でした。綿状になっている部分で耳に入った水を吸い取ってから、耳かき状になっているほうの先端で大きな耳垢を出すと、なんとなく気持ちいいんです。

ですがこのところ、前より耳垢の量が増えたような気がして、どうも違和感が常にあって……」

こう首を傾げるのは、静岡県在住の石山直人さん(仮名・65歳)だ。

「なので朝の洗顔時も耳かきをするようになったのですが、汚れは増えるし、耳の中がかゆくてたまらなくなりました。

綿棒を耳の中に入れると、耳垢だけでなく、耳垂れのような、黄色っぽくていやな臭いのする、ドロッとした液体が付くようになってしまったんです」

違和感が消えない石山さんは耳鼻科へ赴いた。診断は「外耳道湿疹」。鼓膜へとつながる管の部分が傷つき、膿が出てしまっていたのだ。

そして石山さんをなによりも驚かせたのは、医師が告げた次の一言だった。

「これ、耳かきのしすぎが原因ですよ」

背筋がぞくっとするような、なんとも言えない爽快感がクセになる耳かき。こすればこするほど汚れが取れる、妙な達成感も相まって、テレビを観ながら、手持ち無沙汰についポリポリとやってしまう人も多いだろう。

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だが今回、本誌が耳鼻科医に聞いてみると、「耳かきはするべきではない」と口をそろえる。

冒頭の石山さんのケースについて、JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則氏は次のように解説する。

「耳かきをすると耳の中を傷つけて、そこから細菌感染してしまうことがあります。耳垢は、外耳道の入り口にある耳垢腺からの分泌物や、剥がれ落ちた表皮、耳毛がつかんだホコリなどが混ざり合って生成されます。

実は、耳垢には抗炎症作用のある免疫グロブリンAが含まれ、耳の中で細菌が繁殖するのを抑える効果があるのです。なので、完全に耳垢を取り除いてしまうと、かえって細菌感染のリスクが高まってしまいます」

綿棒や耳かきを耳に挿入することは、身体にとっては「異物」が入り込んでくることになるのだ。その異物で、実は耳を守っている耳垢を取り除いていると考えると、耳かきが決して身体にいいものでないことがわかる。

キレイにしているつもりが、実際には細菌が入り込むタイミングを増やしていることになる。

 

「個別包装されていない綿棒や、使い捨てではない耳かきは細菌が付着してしまっていることがあるので、特に注意が必要です。

たかが耳かき、と油断してはいけません。耳かきのやりすぎで湿疹がひどくなると、そこにカビが生えてくることがあります。水虫のように、菌が繁殖してしまうと根治が難しいのです。悪化すると、耳介軟骨膜炎を発症するケースもあります。

これは、軟骨が炎症を起こして激痛とともに耳が腫れ上がる病気で、最悪の場合、耳が変形してしまうこともあるのです」(前出・石井氏)