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「科学の力」で痴漢をなくす、驚きの方法

あなたは「痴漢外来」をご存じですか
原田 隆之 プロフィール

痴漢外来の驚異的な再犯抑制効果

私は、2008年から首都圏の精神科クリニックで、痴漢、盗撮、露出、下着盗などの性犯罪を行った者に対して、「性的依存症」の治療プログラムを実施しており、わかりやすく「痴漢外来」と称している。

これまでおよそ400人が受診し(当然というべきか、悲しいことにというべきか、全員男性である)、治療継続率は90%を超え、再犯率は約4%という成績を上げている。

1クール6ヵ月、週1回夜7時から1時間の集団心理療法による外来治療であるが、仕事が終わった後に、毎週半年も通い続けるのは、相当難しいことであろうと思う。

しかし、これだけの高い継続率を誇っているばかりか、それまで自力ではやめることができなかった人々が、治療を受けるときちんとやめることができているという事実に注目していただきたい。

「患者」の約80%には逮捕歴があり、15%には受刑歴もある。つまり、逮捕されても、刑務所に入ってすらも、性犯罪をやめられなかった人々であるが、治療を受けた後は4%の再犯率という驚異的な再犯抑制効果が示されている。

治療は、認知行動療法という心理療法のアプローチを用いて、独自に開発した治療プログラムを用いて進めている。そこでは数々の技法を用いて、性的衝動や行動のコントロールを取り戻すための介入や、被害者への共感性を涵養する訓練などが行われる。

しかし、その中心的方法はとてもシンプルで、「脳にスイッチを入れない」、あるいは「物理的に痴漢ができないようにする」ための工夫を本人に考えてもらい、実行してもらうというものだ。

 

例えば、満員電車に乗ると誰でも簡単にスイッチが入ってしまうので、1時間早く家を出て空いた電車に乗るという方法や、パートナーと一緒に通勤するなどの方法はその一例である。

一番よいのは、言うまでもなく電車そのものに乗らないことで、会社の近くに引っ越したり、自動車通勤に変えたりする人もいる。すると当たり前ではあるが、魔法のように痴漢行為はなくなり、彼らは口々に「嘘のように楽になりました」と言う。あたかも、喘息の人が空気のきれいな場所に転地療養したかの如くである。

依存症の治療で大事なことは、「野良猫に餌をやらないこと」だとよく言われる。

野良猫とは、ここでは痴漢衝動や痴漢行動であり、餌というのは、性的衝動へのスイッチを入れてしまうものを指し、満員電車のほか、アダルトビデオ、アダルトサイト、飲酒、ストレスなどさまざまなものがある。

野良猫は餌付けしている限りは居着いてしまうが、餌をやるのをやめるとそのうちいなくなってしまう。依存症の治療でも、満員電車のように「餌」になるものが何かを見きわめて、先に述べたような方法でそれをなくしてしまうことが効果的なのだ。

痴漢は罰するもの、という一般的な考え方は間違いではない。痴漢はもちろん犯罪であるし、罰するべきものである。しかし、罰しただけでは問題は解決しない。ましてや、線路を走ってもその先には何もない。