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「科学の力」で痴漢をなくす、驚きの方法

あなたは「痴漢外来」をご存じですか
原田 隆之 プロフィール

痴漢という「病」

痴漢は犯罪かと問うと、100人中100人がそうだと答えるだろう。もちろんそれは間違いではない。

しかし、「痴漢という病」としての観点もまた重要である。このような観点が欠落しているからこそ、上で述べたような「治療」という介入が見落とされるのである。

現に、世界的に用いられている精神障害の診断基準である「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」には、窃触症という疾患がリストアップされており、それは「同意していない人に触ったり、身体をこすりつけたりすることから得られる反復性の強烈な性的興奮が、空想、衝動、または行動に現れる」障害であると記載されている(太字筆者)。

まさに痴漢は、このような病態であると言える。そして、このような衝動や行動が反復され、やめようと思ってもやめられない、まさにコントロール不能になることがこの障害の特徴であり、「性的依存症」とも言える一面も併せ持っている。

痴漢は病気だから治療が必要だ、などという話をすると、「痴漢の味方をするのか」「痴漢は好きでやっているのだから、病気ではないだろう」などという感情的な反発を招くことは予想されるし、現に面と向かって批判されたこともある。

しかし、痴漢行為を医療の枠組みからとらえ直すことは、何も犯罪としての責任を軽くしようとする企てではない。犯罪か、病気か、という二者択一ではなく、どちらの見方の必要だという複合的なとらえ方を提案しているだけである。

 

さらに、これが最も重要な点であるが、私が拠って立つ科学的な立場からすると、痴漢だけでなく、犯罪一般に言えることだが、処罰だけでは再犯の抑制にはならないという科学的なエビデンスがある。

「治療」というオプションを追加することではじめて、確実に再犯が抑制されるのである。センセーショナルに騒いでも、厳罰を科しても、ましてや線路上を走っても、痴漢という犯罪は抑制できない。

つまり、痴漢を病気としてもとらえて治療を提唱する立場は、痴漢撲滅を叫んでさまざまな対策を講じている人たちと同じく、痴漢という犯罪をなくし、これ以上被害者を出さないようにしたいという目的で一致している。

それに加えて、痴漢行為をやめたいと思ってもやめることができず、仕事を解雇されたり、家庭崩壊に至ったり、刑務所に入ってしまったりという、加害者側の悲劇をも未然に防ごうとする努力でもあるが、これは何も加害者を擁護しようという企みではないだろう。自業自得だと見捨てておけばよいということでもない。

では、どのような治療を行うのか、治療にはどれだけの再犯抑止効果があるのか、私自身の行っている取り組みを紹介したい。

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