民間の手で伝統工芸品を再生させるベンチャービジネスの奮闘
六本木ミッドタウンで2億円の売上げを記録

 東京・乃木坂に「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト(MIJP)」という会社がある。資本金は1億円でベンチャーキャピタルも出資している。5年前に日本のもの造り、特に地域の伝統工芸を再生させるという志の下、立ち上がった企業だ。

メイド・イン・ジャパン・プロジェクト(MIJP)社長の赤瀬浩成氏(45)

 社長は赤瀬浩成氏(45)。20代の頃は売れないお笑いタレントで、テレビ番組にもちょい役で出演したこともあった。しかし、「自分には才能がない」(赤瀬氏)と4年で芸能界から足を洗った。

 そして、実家がある岡山県浅口郡里庄町で父が創業したアカセ木工に入社。かつて桐タンス等を製造する家具メーカーだったが、父の代に、ソファーなどもつくるインテリア企業に変身した。桐タンスは代表的な嫁入り道具だったが、クロゼットつきのマンションの普及など生活様式の変化とともに需要が減少したからである。

 家業で修行しているうちに、赤瀬氏は「もの造りの中小企業の多くは良い技術を持っている。だが製品を売るということについては意識が希薄だ」と気づいた。その背景には、伝統工芸というブランドに胡坐をかき、現代の生活環境の変化を意識しないもの造りをしている職人が多いという課題もあった。

 もちろん、職人の中には市場を意識した伝統工芸に取り組んでいる人たちもいる。こうした意欲の高い「職人芸」を支援したいと考えたことが起業の契機となった。

 さらに、公的機関から補助金をもらって、デザイン開発など様々な新規プロジェクトを始めているものの、それがどれだけ販売増に結びついているのかという問題意識もあった。

 実際、筆者の取材でも、地域再生の大義名分の下、国や地方自治体等から補助金が出て、それを業界団体の組合が受け取り、広告代理店等に丸投げし、奇抜なデザインのお碗や器を造り、マスコミで一時的に話題をさらうだけで終わりといった感じのプロジェクトも多い。

 しかも、こうした手法は財源の確保が難題になりつつある。現に中小企業庁の外郭団体である中小企業基盤整備機構では、伝統工芸等の事業計画作成支援を行っていたが、民主党の「仕分け」の対象となり、約20億円の予算が半減した。

 また、同じ経済産業省の製造産業局が管轄する財団法人伝統的工芸品産業振興協会があるほか、文化庁も伝統工芸の振興に関与している。「省庁の縦割りの弊害もある」(関係者)と指摘されている。

産地やブランドを表示しないで売る

 赤瀬氏は、民間企業がリスクを取るかたちで、ビジネスとして伝統工芸の再生を支援したいという思いが強い。アカセ木工の変身のビジネスモデルを事業化しようと、岡山の片田舎から打って出て、新規事業としてMIJPを起業したのだ。

  当初はコンサルティングやマーケティングの支援事業が中心だったが、3年前に東京ミッドタウンや成田空港内にセレクトショップの「THE COVER NIPPON」を開店。約70坪のミッドタウン店では全国47都道府県の約2500点の伝統工芸品等を販売。感度が高い主に30-50歳の女性客をターゲットにしている。1日平均で1000人程度が来客し、そのうち約10%が外国人という。年間に約2億円を売り上げる。

 この店舗の特徴は2つある。まず、「有田焼」などといった商品の産地やブランド表示をしないこと。次に家具と食器をコーディネートするなど全国の産地の商品を組み合わせ、ライフスタイルを提案する方式を採る。顧客に商品そのものの実力を問い、購買意欲を喚起する狙いからだ。

 販売に当たっては、MIJPが厳選する。現代の生活に必要かなど、顧客目線を大切にしている。赤瀬社長は「伝統工芸だからといって、今の消費者は甘く見てくれません。消費者のニーズをとらえるというのは当り前のことですが、それができていないところも多い」と話す。

MIJPは販売だけではなく、コンサルティング事業も行う。その際には赤瀬社長自らが産地に出向き、顧客目線で本当に売る気があるのかも確認したうえで仕事を請け負う。デザイナーが新商品開発の宿題を出し、その課題にどう取り組むかといった姿勢を見るケースもある。

 一般的に伝統工芸品は、生産者→産地問屋→消費地問屋→店という流通形態を取っており、顧客情報が生産者に伝わりにくいといった構造的な課題もある。また、手間隙をかけて職人芸で良い商品だけを造っていれば売れるという意識も強い。

 もちろん伝統や技にこだわる職人芸は必要だが、「良い商品」とは何かを意識する時代になっている。すなわち、職人芸と市場を融合させる時代が来ているということなのだ。

 そして伝統工芸産業は、地域の雇用を支え、観光等をPRする経済効果もあるため、地方自治体はその支援に取り組む。

 しかし、前述したように、補助金の利用実態は必ずしも効果的ではない。自分が稼ぎ出した金ではない補助金頼みでは、投資効果等などの考え方も薄らぐ。アリバイ的に補助金を使うプロジェクトさえあると言われる。産業自体に一種の「甘え」の構造もある。

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