不正・事件・犯罪

検察庁「ペンキぶち撒き事件」は安倍政権への怒りのあらわれか

「一強」の弊害が次から次へと…

配慮と忖度

霞ヶ関の東京地方検察庁前の「検察庁」と書かれた石碑は、不格好なブルーシートでくるまれている。5月27日(土曜)の正午過ぎ、60代の男性が赤いペンキをぶち撒き、汚れてしまったからだ。

器物破損で現行犯逮捕した警視庁は、男性の身元はもちろん、動機や背景などについても明かしておらず、事件はほとんど知られていない。だが、「精神異常ではない」(捜査関係者)ということであり、検察庁の権威の象徴である石碑を汚した行為が、検察への怒りの表明であるのは間違いない。

筆者撮影

既視感がある。

1992年9月、東京地検特捜部は東京佐川急便から5億円の裏ガネをもらっていた金丸信・自民党副総裁に対し、政治資金規正法違反で略式起訴、20万円の罰金刑で事件を終結させた。嵐のような検察批判が起き、「検察庁」の石碑には黄色のペンキ缶が投げつけられた。

検察幹部は、「法に照らせば問題はない」と言い訳したが、大物政治家への配慮であるのは間違いなく、再捜査へ向けて舵を切った検察は、93年3月、膨大なタマリ(隠し資産)を見つけ、金丸氏を脱税逮捕。退官が既定路線だった「捜査の鬼」の吉永祐介・大阪高検検事長を東京に戻し、東京高検検事長を経て検事総長に就け、検察を立て直した。

 

今の検察は、独立独歩の気運、国民の期待を背負って不正を正す、という気概を失っている。7年前、証拠を改ざんして事件をデッチ上げようとした大阪地検事件で、当時の特捜部長らが逮捕されて以降、政治に完全に牛耳られるようになった。

法務省は、捜査より政治スケジュールを優先、政治的な秩序が揺らぐのを嫌う。第二次安倍晋三内閣となり、官邸の力が強くなってからは余計にそうで、捜査スケジュールは事前に官邸に伝えられる。甘利明事件のように、贈賄側が実名証言して証拠を示し、あっせん利得処罰法違反は明白だと思われたのに、東京地検特捜部は甘利事務所の家宅捜索すら行わず、不起訴処分とした。

この安倍首相のお友達への配慮は、森友・加計の両学園事件の今に続く。

森友学園の籠池泰典・前理事長は、事件発覚前までは安倍首相の信奉者であり、籠池諄子夫人は安倍昭恵夫人のメール友達だった。だから財務官僚は、「ないゴミ」を「ある」と言って、国有地を8億円も安く払い下げた。この「配慮」は、「忖度」に置き換えられ、安倍政権を象徴する言葉となる。

そして、財務官僚の忖度が、安倍政権を揺るがすようになると、今度は法務・検察が忖度を始め、「籠池はワル」を印象づけるように捜査着手する。

カネのない籠池前理事長に補助金不正受給の証拠が残されていたのは確かだが、事件当事者ではなく、不完全というしかない政治紙発行人の告発を3月末の時点で受理、捜査着手を宣言したのは、官邸の意を受けた検察の忖度というしかない。

そうした検察の姿勢は、起訴権を委ねることで密接な関係を結ぶ警察にも伝搬する。「安倍一強」の弊害はここにも出ており、政権と警察の危険な近さを示すエピソードには事欠かない。

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