学校・教育 子育て

子どもを伸ばす「ほめ方」とダメにする「ほめ方」は大違い!

世代間連鎖を防ぐ子育て論(3)
信田 さよ子 プロフィール

子どもを操作するためにお金を利用する親もいます。

たとえば、「今度のテストでいい成績をとったら、ずっとほしかったゲームソフトを買ってあげる」という場合。中にはお小遣い増額と言う親もいるようです。

結果を出させるために、報酬である金銭を事前に予告するのです。受験をめぐる親子関係において、このようにお金を用いて勉強へのモチベーションを高める親は珍しくありません。

さらに、親が疲れていたりすると、ついついお金を与えがちになります。言葉で説明するよりお金を与えたほうがずっと簡単に子どもを動かせるからです。

母の愛とお金

ミキさんは、物心ついてからずっと、教師だった母親から「あんたにはちゃんとお金を用意してあるからね」と言い聞かされてきました。

小学生のころから成績もよく、家事も手伝っていたミキさんは、ことあるごとに「ミキはしっかりしてるね」「あんたはほんとに手がかからない子だ」の二語をいつも言われてきました。

ミキさんにとってそれは「しっかりしなければならない」「親にめんどうをかけてはいけない」という気持ちになる言葉でしかありませんでした。

甘えや依存とは無縁の親子関係でしたが、唯一の例外が「あんたにはちゃんとお金を出してあげるからね」というささやきでした。

現実には、志望する大学も自宅から通えという母親の言葉によってあきらめ、画家になりたいという希望も美術の先生になることに変更しました。

しかしどこかで、人生で困ったときのために母親はお金を用意しておいてくれるという最後の絆だけは信じていたのです。

 

7歳年下の弟のマコトさんは、ミキさんより成績は悪く、借金を重ねていろいろと職を変えた末に介護関連の仕事に就いていました。

あまりに勝手な行動に腹を立てたミキさんは、ある時から弟とは絶縁状態になりました。母親から弟の愚痴をずっと聞かされてきたせいで、最後は自分が母のめんどうを見る覚悟でした。

ところがあるとき、母親が弟にマンションを買い与えていたことが発覚したのです。結婚をあきらめて、母と同居も考えていたミキさんにとって、それは衝撃的な裏切りでした。

お金を出してあげるからという母の言葉は、ミキさんにとっては母の愛をぎりぎり信じさせるものでした。ところが母は、弟にマンションを買い与え、おそらく借金の返済も引き受けていたのです。

それを責めるミキさんに、母親は言い放ちました。

「あんたと同居するつもりなんかないよ、マコトの勤める介護施設にもう予約してあるから」

このように、愛情とお金とは、時には重なって見えるものです。

だからこそ、育児においては、親の愛とお金とは切り離すということが重要になります。つまり報酬にお金を介在させないことです。

具体的には、物を買ってあげることを条件にしない、子どもに嫌われないためにお金をあげたりはしない、などなどいくつも挙げることができます。

まとめてみましょう。

子どもに報酬を与えるときには、親自身がどのような金銭に対する価値観を持っているかを、点検する必要があります。「世の中すべて金次第」と考えてしまうことが多くても、子育てにおいてはそれ以外の報酬を与えるようにしましょう。

子どもの態度や取り組み方、頑張る姿をほめたり、家族で楽しいことをしたりするような報酬を与えるようにしたいものです。

(→第4回「子どもにどう"命令"するか」はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52277

*本連載のバックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/sayokonobuta
家族のゆくえは金しだい“愛と絆”だけでは乗りきれません。持てる世代の親と、無職の子ども。依存症者とその家族。経済的DV…。リアルな事例から現代日本を浮かび上がらせ、実践的な打開策を満載。