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子どもを伸ばす「ほめ方」とダメにする「ほめ方」は大違い!

世代間連鎖を防ぐ子育て論(3)
信田 さよ子 プロフィール

「95点のテストは見せられない」

子どもの習慣形成において、恐怖や緊張を用いたしつけこそが有効であるという考えは、現在でも説得力を持っています。特に規律を重んじる教育では、体罰や怒鳴ることが今でも行われています。

親もそのことを望んでいれば、それほど問題にはなりません。特に運動部などの体育会系といわれる教育現場ではこのようなことが珍しくないようです。

いっぽうで「子どもをほめて育てる」という考え方も、多くの育児書で推奨されています。

それに対して、前者の教育を支持するひとたちは、「甘やかすとろくなことはない」「ほめてばかりいたら増長して何もしなくなってしまう」と批判します。

AC(アダルト・チルドレン)と自認したひとたちが回想する親の姿は驚くほど似通っています。

「絶対にほめない」「ダメな部分を見つけて批判する」だけでなく、楽しそうな雰囲気を漂わせていると「いい気になるんじゃない」「人生そんな甘いもんじゃない」と腰を折るのです。

「テストで95点をとると、家に帰って母親に見せるのが怖くてたまらなかった」という彼女たちの言葉が不思議だったのですが、謎は解けました。

彼女たちの母は、「あと5点なのに、たった一問なのに、なぜ間違えたの!」と激しく叱責するのでした。

もし60点だったらそれはそれでボロボロになるまで叱られ、100点をとれば「いい気になったらダメ」と言われ、要するに決してほめられることはないのです。

 

しつけのための2つの報酬

その対極にあるような、ほめて育てる子育てとはどのようなものでしょう。

さきほど述べた学習理論に必要なもうひとつの要素は、「報酬」です。苦痛を回避するための、恐怖にもとづいた行動習慣に加えて、もうひとつ、「言われたとおりにやるといいことがある」という経験によっても行動は形成されるのです。

パブロフの犬の実験はとても有名です。ベルが鳴るとえさが出てくるということを繰り返し経験した犬は、ベルの音を聞いただけで、よだれが出てくるようになったのです。

子どもにとっての報酬とは、なんでしょう。

それは「物質的報酬」と「心理的報酬」とに分けることができます。

ピアノのレッスンを熱心にしたら、おやつを与える。言うことをきいてお片付けをしたら、ほしがっていたおもちゃを与える。これらは、物を報酬として与えることになります。

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一方、心理的報酬の多くは言葉によって与えることができます。

「ほんとにがんばったね」
「よくやったね」「えらかったね」
「ママ、ほんとうにうれしいわ」

などとほめることです。

子どもが小さければ、抱きしめてあげて、いい子ねと頭を撫でることも報酬になるでしょう。

さて、次のほめ方をさきほどのほめ方と比べてみましょう。

「これでみんなより上になれるね」
「目標達成できたね」
「すごい成績だったね」

前者は、本人の取り組む姿勢、一生懸命さをほめていますが、後者は、望ましい結果を出せたことをほめています。

親はそれほど区別していないかもしれませんが、子どもはその違いに敏感なものです。