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学校・教育 子育て

子どもを伸ばす「ほめ方」とダメにする「ほめ方」は大違い!

世代間連鎖を防ぐ子育て論(3)

子育てにも流行がある

「しつけ」という言葉は、最近育児雑誌にもあまり登場していないようです。しかし、社会の一員として生きていくためには、守らなければならないルールやきまりがあります。

それを子どもたちが身に着けることは、社会生活を送るためにも必要なことでしょう。ここでは、親が子どもにそれらを身に着けさせることを「しつけ」と呼びたいと思います。

しつけとは、簡単に言えば、社会で生きていくために望ましい行動を習慣化させていくことです。時には、叱ることも必要になるでしょう。

じつは子育てやしつけにも流行があります。かなり前になりますが、元東京都知事である石原慎太郎の著書『スパルタ教育』(光文社、1969)が70万部の大ベストセラーになりました。

当時子育て中の親たちは、その影響を受けて子どもをきつく叱ればいいと思ったのかもしれません。

カウンセリングに訪れる50代の女性たちの中には、記憶の中で、ふだん本を読まない親が『スパルタ教育』という表紙の本だけは読んでいたと証言する人が多いのです。

彼女たちは、もちろん子ども時代に親から壮絶な身体的虐待を受けて育ってきた人たちです。

日本で児童虐待という言葉が一般化したのは、1990年代に入ってからです。80年代までは、殴る蹴るといった行為もスパルタ育児として正当化され、体罰は「愛のむち」「せっかん」として肯定されていたのです。

中でもスポーツにおいては、根性をきたえることを目的に、今から思うとかなりひどいこともしてきたようです。

マンガ『巨人の星』の主人公、星飛雄馬が父の命令でホームランバンドを肩にはめ、涙を流してトレーニングする場面など、今読むとかなり悲惨です。目撃したひとが児童相談所に「虐待だ」と通報しても今なら不思議ではないでしょう。

これは単なる根性論からくるものではなく、心理学の学習理論などが影響している行為だと思われます。

しつけの基礎は「苦痛への恐れ」

学習理論というのは、簡単にいえば、人間は「ある行為の結果、痛い思いをした」「叱られて体罰を与えられ、苦痛だった」といった経験をすると、次回はそれを回避しようとするというものです。

生きていくためには、生存を危うくするような苦痛を回避しなければならないからです。これは一種の学習行動とも言えます。

 

また行動主義心理学では、人間の行動は、与えられた刺激に反応するということが習慣化することで形成されていくと考えられています。

こうしたことから、痛い思いをしないようにというのは、一種の「苦痛への恐れ」が基礎になっていることがわかります。

失敗したらお父さんから殴られる、だから失敗しないように試験勉強もがんばる、というのも学習理論に立脚しているといえます。

ところが、恐怖からくる学習に基づいて行動するには、絶えず緊張していなければなりません。大きな震災を経験すると、ちょっとした揺れにもびくっとします。この恐怖が親からのしつけだったとき、親に対する緊張感が強くなるということもしばしば起こります。

そんな子どもたちは、二度と痛い目に遭わされたくないため、親の前では、失敗しないように、口答えして叱られないように、いい子となります。

しつけというものは、このように学習理論によって、親から見た望ましい行動を強い、それを習慣づけていくことだといえます。基礎にあるものは、苦痛を回避したいという生存のための行動、それに伴う緊張ということになります。