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シリコンバレーで自閉症が急増中!? いったい何が起きているのか 

覆される「固定観念」
スティーブ・シルバーマン

なぜ自閉症者は増えているのか

シリコンバレーのようなコミュニティで自閉症者が増加している理由を、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の神経遺伝学者、ダン・ゲシュウィンドが解説してくれた。

彼によると、ひと昔前までは目立たなかった自閉症の男性と女性が、そこでは社会進出することに抵抗がなくなったため目につくようになったからだという。

言語病理学者のミシェル・ガルシアは、自分の患者の両親の多くは、子どもたちの診断で初めて自身の自閉症の特徴に気がつくのだと話してくれた。

テンプル・グランディン(自閉症と診断されながら博士号を取得し大学教員となったことで有名になった女性)はその著書『自閉症の才能開発』の中で、「結婚は、2人とも自閉症で出会った場合と、一方が自閉症で相手が障害者かエキセントリックな場合に一番うまくいく。彼らは似た波長のもと、知性を働かせるため惹かれ合う」と述べている。

自閉症が増えているという声に、政府も手をこまねいているわけにはいかなくなった。

2000年以降、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は年平均にして5100万ドルの研究補助金を支出するようになる。2006年には自閉症支援法に後押しされ、総額は10億ドルにまでふくれあがった。

サイモンズ財団のような個人の資金グループもまた研究の後押しをするようになり、2011年には、世界で最も大きな自閉症の研究助成団体であるオーティズム・スピークスが、自閉症の子どもが2人以上いる家族を対象に、計1万人のゲノム配列を調べようとしていた北京ゲノム研究所の調査チームに、5000万ドルを出資することを発表した。

組織の副理事であるアンディ・シーは、このプロジェクトは革命的な情報をもたらすことになるだろうと期待を抱かせた。

 

研究が70年も行われているのに…

しかし2010年頃には、科学者はただ資金を得るための研究をしているにすぎないと批判を浴びるようになる。

分子生物学者たちは、1000人以上の被験者の遺伝子を検索し、自閉症に関連するとおぼしき数百のデノボ変異(親から受け継いだのではなく、新しく発生した変異)を特定した。さらに、遺伝子と環境の相互作用を仲介する要因であるエピジェネティクスについて、より理解を深めていった。

自閉症のきっかけとなる疑いのある環境要因のリストは日ごとに長くなり、日常で使われる多数の化学物質がそこには含まれていた。

だが自閉症の子どもを持つ家族にとって、生活の質がどんな形であれ改善されるきざしは、まったくみられなかった。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の最近の概算では、アメリカの68人の児童のうち1人は自閉症であり、数百万もの家族が数十年後の将来を案じて眠れない夜を過ごしていると想定される。

多くの自閉症の人が仕事に就けず、障害の金銭的援助を受けることにも苦労している。

個別障害者教育法(IDEA)が可決され20年が経っても、両親たちは未だ地域の学校運営者に、彼らの息子や娘たちに適切な授業の設置を求めて訴え続けている。

また、支援団体によって集められたわずかなお金しか、自閉症の人々とその家族の日々の生活に充てられていない。

心の中に、素朴な疑問が湧いた。

研究が70年も行われているというのに、自閉症について、どうして私たちはほとんどなにも知らないのだろうか?