Photo by iStock
ライフ

オックスフォード卒、外資系投資ファンド勤務の才女「まさかの転身」

「仕事がつまんなくて」NPO活動に

安定した地位を捨ててまで、彼女たちは一体何がしたいのか? 高収入、高学歴、高職歴など、一見すると人生に変化を求める必要のない女性たちがNPOなどへ転職する現象をまとめた本『N女の研究』を半年前に上梓した。

女性たちの取材を始めたきっかけは4年近く前になる。外資系IT企業を渡り歩いてきた親友が、突然東北の復興事業を担う非営利組織へ転職したのだ。しかも彼女だけでなく、他にも同じような選択をする女性たちが、30代の私の周りでは増えつつあった。

「えっ、辞めちゃうの? もったいない!」と思わず叫びたくなるような有名企業をサクッと辞めて、年収250万円もらえればいい方と言われるNPO業界へ転職する不思議な女性「N女」たち。

彼女たちが出現してきた背景には、深刻化する社会問題や、男性中心の企業文化の中でキャリア女性が直面する数々の障害、また結婚を機に経済的負担が軽減されるという日本女性特有の甘さなどがあった。

Photo by iStock

一方で、取材したN女の約半数がサラリーマンの平均年収並みの給与を得ているなど、NPO側の待遇が改善されつつあることも彼女たちの背中を押している。

ただ、今日お伝えしたいのは、実は彼女たちのことではない。国外のN女たちのこと。私が今暮らしている香港で起きているN女現象についてである。

「これまでで一番給料が低いです」

香港に移り住んで8ヵ月。大学院に通う私の周りにも、NGO(香港では非営利セクターをまとめてNGOと呼ぶことが多い)で働いていたり、または将来働きたいと思っている女性たちがかなりの確率で存在する。

彼女たちの学歴は高く、もともと国際的な金融機関や外資系投資ファンド、大手テレビ局に勤めていたなど、仕事にも恵まれている。それでも彼女たちは「仕事がつまらなかった」ことを理由に前職を辞めてNGOに移った。

 

「うちの職場もスタッフは女性が多くて、学歴は高いです。海外の名門大学の出身者も何人かいますし。例えば、オックスフォード大学とか」と話すSさんに、こうした就職志向は昔からあったのかと聞くと、ここ最近の傾向ではないかと言った。

「少なくとも、私たちの親世代では考えられなかったことです」

日本と同じだ、と思った。どうやら香港でもN女現象が起きているらしい。

Sさん(36)が勤めるNGO「フード・エンジェル」では、食料廃棄と生活困窮者の問題に取り組んでいる。

香港では日々、ホテルやレストランなどから3500トンを超える食料が廃棄されているが、この団体で毎日4トン分の食品を引き取り調理することで、ホームレスや失業者、障がい者、生活困窮家庭、そして高齢貧困者(香港では多数)などに6000食分の温かい食事と1500食分のパック食品を提供している。

Sさんが団体で働くようになってもうすぐ3年になるが、「これまでに経験した勤め先の中では一番給料が安い」と言って彼女は笑った。