週刊現代

拡散されるフェイクニュースを「虚構新聞」発行人はどう見ているのか

もう中途半端なウソは書けない

事実が誤報

―現実にはありえない”フィクションのニュース”を掲載するウェブサイト「虚構新聞」。『虚構新聞 全国版』には、'04年3月の創刊以来、これまでに配信された1200本以上の記事の中から、厳選した253本が収録されています。

私は以前、個人のニュースサイトを運営していたんですが、エイプリルフールに嘘の記事を書いてみたところ、友人の間で評判が良かったんです。そこで定期的にフィクションのニュースを配信するうちにネット上で話題となり、気づけば13年が経ちました。

こんなに長く続くとは思いもしませんでしたね。今回、本にまとめるにあたっては、時間が経っても面白く読める記事を選びました。

 

―「ノーベル平和賞をノーベル財団が受賞」「ラジオ体操正午に移動『朝起きられぬ』声多数」など、ニヤリとさせられる“ニュース”が満載です。

日ごろ新聞を読んだり、ニュース番組を見ているうちに記事を思いつくんです。新聞やテレビといったマスメディアでの流行だけでなく、ゲームやアニメといった、インターネット上で関心の高い話題も取り上げるように意識しています。

―「紫式部の『裏日記』発見」や「大学入試の『人物本位入試』に人工知能(AI)が挑戦」など、文芸や科学に関するニュースも充実していますね。

もともと文系出身なので、文学などへ関心が高いんです。また、宇宙論などのサイエンス系の本が好きで、科学の話題にも興味があり、最近だと人工知能のネタが多いですね。

ただ、今は技術開発のスピードが速いので、中途半端なことを書くと、あっという間に現実に抜かれてしまいます。囲碁でAIが人間に勝ってしまう時代ですから。

―昨今は、信じがたいニュースが報じられると、「虚構新聞のデマ記事だろう」と騒がれます。

昨年だと、SMAPが解散したときにそう言われました。いつもは閲覧者の少ない真夜中の3時ごろ、急にサイトのアクセス数が増えたので、妙だなと思っていると、SNS上で「虚構新聞がSMAP解散という嘘の記事を出した」と騒ぎになった。

SMAPが解散するなんて知りませんでしたから、どういうことかと思っているうちに、スポーツ新聞の記事が配信され「本当だったんだ」と驚きました。意外なニュースがあると、真っ先にウチが疑われます。

―虚構を報じる新聞だけに“事実”を報じてしまった場合は”誤報”として謝罪記事が載ります。

フィクションとして書いた記事が、現実化してしまうことがあるんです。例えば'15年の2月に、「政府が日本の『謙虚』という美徳を海外に発信するためにプロジェクトを発足し、200億円の予算を計上」という記事を書いたんですが、去年の6月から、実際に経産省がクールジャパン戦略の「世界が驚く日本」という事業の中で日本人の謙虚さを海外に発信することを始めました。

しかも、この事業を推進する官民ファンドには210億円の資金が計上されていた。まったくの偶然ですが、予算額までほぼ同じでした(笑)。