ライフ 雑誌

平均年齢70歳のワークグループにみる「ひとが集まる」仕組みの秘密

世田谷区『せめてしゅういち』の働き方
おとなスタイル編集部

ゆるいところから始めてみたら…

メンバーの経歴はじつにさまざまだ。カフェやケータリングの料理を担当する小林千鶴子さん(70代)は、カフェから徒歩数分の場所に住むご近所さん。9年前に夫を亡くし、しばらくはひとり時間を持て余す日々。そんなとき、地元のお祭りで清子さんに出会い、思わぬ誘いを受けたという。

「私が料理好きだということを知って、清子さんが、カフェの隣のデイケア施設で出すお弁当作りを手伝ってくれないかと。お勤め経験はあったけれど、あとはずっと家事だけ。でも、家族が料理をよく褒めてくれていたのを思い出して、引き受けることにしたのです」

千鶴子さんの“家庭の味”は美味しいと評判になり、やがて近所の学校から、教職員用のお昼の弁当作りの注文が舞い込んだ。すると彼女はさらに本領を発揮していく。

千鶴子さんのお弁当の一例。最近では、若い仲間のアイディアもプラスし、和食、洋食、サラダなどバリエーション豊富。

「月曜日から金曜日までの週5日、毎日約10人の先生のお弁当作りを約2年間、続けました。毎日レシピを記録して、一度も同じおかずを出さないようにあれこれ工夫。旬の食材を使い、限られた予算の中でレシピを考えるのは、忙しいけれどいい脳トレになり、もう毎日が楽しくて。

それに、美味しいって言ってもらうと、その気になるんですよ(笑)。ずっと家族のためにやっていた料理作りがこんな形で仕事になるなんて、思ってもみなかったけれど、今は生きがいになっています」

 

山渕達也さん(70代)は、森田夫妻のワークショップ参加者からメンバーになった一人。30年以上、商工会の経営指導員として勤務し、定年後に、声をかけられた。

「清子さんは“参加しませんか”というけれど、“あなたはこれをやってください”と強制することはありません。なので、自分の力を活かせるのは何だろうと考えて、長年、携わってきたことから、カフェの経理を担当することにしました。

その後、年寄りの知恵を若い人にも伝えられたらと思い、カフェに来るお母さんや子供さんたちに親子簿記の教室や、お金にまつわる個人レッスンを開催してみました。すると、続けて参加してくれる人もいて、それが励みに。

“せめて週一”なのに、多いときは週5日も神奈川県の葉山から通っています」

山渕さんの指導を受けて、不登校の生徒が経理の勉強に興味を持ち、金融系の会社を受験。みごと就職に成功したという例もあるそうだ。