写真:おとなスタイル
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平均年齢70歳のワークグループにみる「ひとが集まる」仕組みの秘密

世田谷区『せめてしゅういち』の働き方

平均年齢はなんと70歳——週に一度集まって、みんなの得意なことを生かした高齢者就労グループがいま注目を浴びている。行政も視察にくるというこのプロジェクトを、季刊誌『おとなスタイル』の編集部がリポート。

 

その名は「せめてしゅういち」

東京都世田谷区、多摩川を望む閑静な住宅街を拠点に活動する平均年齢70歳のワーキング・グループがいると聞いて、現場を訪ねてみた。

4月のある日、メンバーはカフェに集まって会議中。じつはこのカフェの運営も彼らの仕事のひとつで、キッチンで料理を作る人も、経理を担当している人も、みんな60歳以上だ。このグループの名は『せめてしゅういち』。

「せめて週一回は元気に会いましょうね? という思いを込めたネーミングです。定年を迎え、子供たちも独立、仕事や人生が一段落して何かしらの転機を迎えるのが60代。今の時代の60代は体力も気力もまだまだある。

にもかかわらず、“リタイア組”といわれ、居場所をなくしてぽっかりしている人が意外と多い。そういった思いを持つ60代以上の人が楽しく過ごせて、さらに、そこから新たなやりがいや生きがいを見つけていく……。

そんなきっかけになればと思い、このプロジェクトをスタートさせました」と話すのは、代表の森田清子さん(以下、清子さん)。

行政も注目するという『せめてしゅういち』の大きな特徴は、メンバーの一人ひとりが自発的に仕事を生み出し、収益につなげていることだ。

高齢者就労プロジェクト『せめてしゅういち』メンバーのみなさん 左から山渕達也、加藤昇太、増島季美代、吉村順子、森田清子、小林千鶴子、宮永捷(敬称略)

そもそもこのユニークな取り組みはどこから始まったのか、清子さんが話してくれた。

「演出家である私の夫・森田雄三と私は、約40年前から俳優のイッセー尾形さんの舞台に関わる仕事をしてきました。さらに1995年からは“フツーの人々の日常”を題材にして芝居を作り、それを一般の人が演じるというワークショップを全国で開催。しかし数年前、夫が体調を崩したこともあって、興行の仕事を一旦、休止することに。

そこで、芝居の稽古場として使っていたスペースを利用して、カフェと、障害のある子供たちのためのデイケア施設を開設することにしたのです。

ちょうどそんなときに、東京しごと財団(※1)が、60歳以上を雇用するモデル事業計画の募集を知り、“あ、これだ!”と直感。私たち夫婦を始め、これまでワークショップを通じて知りあった人、そして、この地域にも、いわゆる元気な高齢者がたくさんいる。

だったら先に作ったカフェを活動拠点にして、彼らが集い、やりがいを感じられる仕事場を作ろうと動き出したのです」

そんな熱い思いを“60歳以上の人が自身で働く場を生み出し、情報交換をするプロジェクト”として申請。森田夫妻が応募した企画は高齢者職域開拓モデル事業(※2)に認定され、立ち上げ資金などの助成を受けて2015年4月にスタートした。

現在、主に8人のメンバーが、カフェの飲食の提供、デイケア施設の弁当作り、イベントやパーティ用のデリバリーやケータリング、さらにラジオ番組の制作、各種のワークショップなどを行っているという。