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世界中が注目するイーロン・マスク「惑星間ネット構想」の全貌

実はこんなドタバタ劇があった!

高性能の宇宙ロケットや、スタイリッシュな電気自動車をイチから創り上げ、いまや世界中から注目を集めるイーロン・マスク。「ビジネス書グランプリ2016」を受賞した本格伝記『イーロン・マスク 未来を創る男』の著者が、同書では書ききれなかった驚愕の「宇宙間インターネット構想」について、新たに書き下ろした。

世界中の注目を集める"マスク劇場"。その第2幕をお届けする。

 

グーグルの宇宙衛星計画

2014年に私はマスクと何度か会食しているが、ある日の会食でのこと、彼がテーブルに身を乗り出すように話し始めた。

いつもより興奮気味なのはすぐにわかった。直前にグーグルの知人に会って、とんでもない話を仕入れてきたという。詳しくは言えないとのことだったが、マスクがあるヒントをくれた。

グーグルがかなり大胆な宇宙衛星計画を練っているらしい。その規模やミッションを知ったら誰でも度肝を抜かれるはずだというのだ。

と、そこまで話すと、マスクは突然飲み物をオーダーして黙り込んでしまった。なんとも思わせぶりな男だ。

その時点ではピンとこなかったのだが、何ヵ月か経っていろいろな情報の断片をつなぎ合わせているうちにハッとした。壮大な"マスク劇場"の第2幕が始まっていたのである。

マスクが関わる案件に共通して言えることなのだが、まず大きな野望があって、危険な駆け引きが始まる。

その後、かなりえげつない足の引っ張り合いを経て、やがてマスクがトップに上り詰めて華々しいフィナーレを迎える。しかも、当代切っての常識破りで冒険好きな起業家として名を馳せるのだ。

伏線はあった。話は2013年にさかのぼる。夢を語らせたら立て板に水のごとくに話が止まらない男がグーグルに入社した。起業家のグレッグ・ワイラーだ。

ワイラーは20代のころ、PCの特殊な冷却システムの設計で大儲けした後、その会社を売却する。

1990年代後半のITブームの際、潤沢な資金を不動産や当時のIT企業株に投資した。 だが、2002年、ワイラーの人生は大きな転機を迎える。

マサチューセッツ州ウィンチェスターに暮らす母親、スーザンを訪ねると、何者かに殺害されていたのだ。鈍器のようなもので頭部を殴られ、遺体が横たわったガレージは血の海だった。

ワイラーは、不仲だった父親のジェフリーに疑いの目を向ける。雑誌の取材には「誰かが母の家に押し入って殴り殺したんです。物は一切盗られていない。これだけが狙いだったんです。狙いはたったこれだけ(*事件の捜査はその後も長年にわたり続いているが、地元警察はまだ容疑者を特定できておらず、ジェフリーに容疑がかけられていることもない。最近、ワイラーは事件について何も語ろうとしない) 」と答えている。

この殺人事件はワイラーの人生に大きな影を落とした。そして、彼はもっと大きなこと、人生でもっと意義のあることをしようと決心する。人助けになることをしたいという思いがわき上がったのだ。

やがてワイラーは、これまで経済的な事情や地理的な制約でインターネットが使えなかった人々にインターネット環境を提供するという使命を追いかけるようになった。

「質の良いインターネット環境が整えば、経済成長につながる」

彼の口癖だ。こうして彼は、インターネット環境を提供して人々の暮らしを良くするというゴールに、それからの10年を捧げることになる。