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エンタメ

アメリカはまだベトナム戦争を納得できていないのではないか

白人vs有色人種の根深い対立

映画が映すアメリカの現状

『メン・イン・ブラック』(1997)が、アメリカのメキシコ移民問題を扱った映画だと言ったら笑われるだろうか?

いや、あれは宇宙人を取り締まる機関の話じゃないかと言われてしまうかもしれない。けれども、ウィル・スミス演じるところの主人公ジェームズ・エドワーズ刑事が黒人であり、相棒となるK(トミー・リー・ジョーンズ)が白人であることを思い出してみてほしい。

そうなのだ。これは20世紀の終わりごろから急速に増え始め、ついには人口比で黒人の数を上回るに至ってしまったヒスパニックの問題抜きには見ることができない映画なのである。

2000年に黒人の数を上回って、ヒスパニックはアメリカで最大のエスニックグループとなった。カトリックが多いヒスパニックは多産であり、このまま増加しつづければ、数十年後には白人の数をすら上回りかねないと予測する学者もいるほどである。

しかも、「アメリカに同化しない最初の移民」と言われる彼らは、アメリカに住んでも英語を習得しようとしない者が多い。つまり、英語中心のアメリカ人にとって、まさにヒスパニックはエイリアンなのである。

そんな、自分たちの存在を脅かす彼らを、白人と黒人がチームを組んで追い返そうとする物語と、この映画を再解釈することができるわけだ。

本稿では、これから、キングコングがドナルド・トランプ大統領だと言ったり、スーパーマンだと言ったり、いやそうじゃなくてベトコンなのだと言ったりする。

そんな突飛な言い草が、それなりに妥当性をもつ見方なのだということを、『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年3月公開)を未見の方にも伝わるように書いてみようと思う。

つまり、この映画が『メン・イン・ブラック』同様、アメリカの現状をみごとに映し出しているのだということを証拠立ててみたいと思うのだ。映画の内容にも触れつつ書いていくつもりなので、未見の方も含めて、しばらくお付き合いいただければ幸いである。

キングコングが象徴するもの

1944年、南太平洋のどこともしれない島に二人の兵士がパラシュートで不時着する。一人は日本人兵士、もう一人はアメリカ人兵士。出会うや否や二人は憎しみを露にし、断崖絶壁の前で戦い始める。突如として、そんな二人の目の前にその断崖の下から巨大で毛むくじゃらな怪物が姿を現す。

『キングコング:髑髏島の巨神』の冒頭シーンである。この場面の直後、舞台はおよそ30年後、ベトナム戦争終結直後の1973年に移行する。

人間同士の戦いを、卑小なものとしてしまう圧倒的な力の顕現というこの冒頭のイメージは、重要な意味をはらんでいるように思われる。以下、この圧倒的な力の持ち主をめぐる二つの見方を対峙させてみたい。

 

映画の舞台となるのは、タイトルが示すように南太平洋にある未知の孤島、髑髏島(スカルアイランド)。地球空洞説を奉じる二人の科学者は、自分たちの説を明かし立てる証拠がこの島にあると考えている。

「早くこの島を調べなければ、ソ連に先を越される」という口実で、アメリカ政府から予算を出させることに成功した彼らは、高度な身体能力をもつ元兵士で、ジャングルでの経験が豊富なジェームズ・コンラッド、女性報道カメラマンのメイソン・ウィーバーらとともに、この島へと乗り込む。

ただ、この島には危険が想定されることから、ちょうどベトナム停戦で撤退するところだったプレストン・パッカード大佐を指揮官とするヘリコプター部隊に、護衛の任務が課せられる。

島は常に激しい嵐に包まれ、それによって外界と遮断されてきたのだが、パッカードのヘリコプター部隊は、これを強行突破して、島への接近に成功する。

ところが、島に近づいた時、身長31.6メートルにも達する巨大なゴリラが現れ、攻撃に転じたパッカードの部下たちのヘリが次々と破壊されてしまう。

これを機に、サミュエル・L・ジャクソン演じるところのパッカード大佐は、キングコングへの復讐に取り憑かれることになる。

その背後にあるのは単に部下を殺された腹いせではない。実のところ、彼はベトナムという倒せなかった敵に対する怒りを、キングコングへの復讐へと転嫁したのである。

つまり、パッカードはキングコングをベトナムとは異なる、「倒しうる敵」とみなそうとしたわけだ。けれども、イギリスの大手新聞である『ザ・ガーディアン』2017年3月22日の記事で、ジェームス・ロバート・ダグラスは、それは大きな過誤であるとしている。

なぜなら、キングコングは倒し得ない、無敵の存在だからである。なおかつ、キングコングは映画の中では、島の先住民たちに神として崇められている。キングコングこそがこの島の守護神だからである。

二人の科学者の予想どおり、この島には地球内部の空洞に通じる穴がある。そこを通って現れる人喰いの怪物たちを倒すことで、キングコングは、先住民たちを脅威から守っているのである。