あまりに危ない原口大臣
「郵政10兆円投資構想」のお粗末

今度は郵政資金を狙う
日本版国家ファンドの亡霊

 国家ファンドビジネスを企む向きは、「なにはともあれ10兆円」をどこかから切り取ることを考えているようだ。そして、その新たなターゲットとして、郵政資金が狙われ始めたようだ。

 4月27日の『朝日新聞』(朝刊、1面、3面)に掲載された単独インタビューで、原口一博総務大臣は「(1)海外を含む成長分野へ10兆円規模を投資(融資含む)する郵政改革法案成立前でも一部投資に踏み切れるようにする」との方向で検討していることを明らかにした。

 記事には、インフラ整備などで海外進出する日本企業を国家戦略的に支援する狙いがあり、日本郵政には大型投資のノウハウがないため、海外ファンド(ほら、出た!)などを通す間接投資とする、とある。

 自民党政権時代に、一部の議員が日本版国家ファンドの設立に向けて議連を立ち上げるなどの活動を繰り広げたことがあるが、当時から、よく出てくる数字が10兆円だった。

 日本版国家ファンド構想は、金融危機で世界の国家ファンドの運用が低迷したこともあって、大方の支持を得るに至らず、自民党が政権を失うのと共に立ち消えになった。

 その後、「国家ファンドビジネス」を狙う人々は、国家ファンドを単独で立ち上げなくとも何らかの公的な資金に、いわば「寄生」して実を取る方向に方針転換したようだ。

 国家ファンドと名前が付いていなくても、海外籍のものも含めてファンドに資金を配分することができ、内外のプロジェクトにリスクを取る資金を引っ張ることができれば、金融版の公共事業利権のようなものが出来上がる。

官僚にも政治家にも都合のいい存在

 寄生先として最初に狙われたのは、120兆円に及ぶ積立金を持っている公的年金資金だった。舛添要一氏が厚労大臣だった際にも、10兆円くらい積極的な運用にチャレンジしてもいいのではないかと思っている、という答弁をしたことがある。国家ファンドビジネスを企む関係者が話を吹き込んだのだろう。

 年金資金については、その後も資金の一部を国家ファンド的な運用に振り向けることを狙う人々がいるようで、まだ楽観はできない。

 しかし、年金運用の場合、運用の計画・実行・レビューの各段階で第三者に対する説明と運用プロセスに関する責任を求められるので、金融版の公共事業利権に大金を流用するには、公的年金の資金はそう都合がいいとは思えない。

 公的年金資金の他に狙うことができるのは外国為替特別会計だが、こちらは、財務省のガードが固い。

 この点、郵政資金はそもそも元になる資金の額が大きいし(郵貯・簡保資金で計約300兆円。うち226兆円が国債)、日本郵政は基本的に民間会社なので、国策と民間企業の判断とを使い分けると自由度の高い資金として利用することができるかも知れない。なかなか悪知恵の働いた狙い筋といえる。

 原口大臣はインタビューの中で「あくまで民間企業の経営判断によるもので『国家ファンド』のようなものではない」と述べているが、他方で「私たちは戦略的にお手伝いする」「政府間協定の下で信用力の高いものを他のファンドを経由して投資する」と述べており、資金の使途に政府が関わるのだから、これは国家ファンドの変形に過ぎない。

 悪くすると、将来何があっても「民間企業の経営判断」という呪文で責任逃れができてしまう。一方で、日本政府が日本郵政を支援しないということはまずあり得ない。

 そもそも、政府の紐の付いた形での民間会社となる日本郵政は、天下り先としては民間企業並みの報酬を支払うことができるし、大きな資金をどう動かすかを通じてさまざまな影響力を行使することができる。

 官僚と政治家にとって、極めて都合のいい「絶妙に中途半端」で且つ巨大な存在となる。

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