企業・経営

「日本の電機全滅」はなぜ起きたか 本当の要因

これは、避けては通れない道だった
大西 康之 プロフィール

連合国 vs 日本軍と同じ構図

東芝、日立製作所といった日本の電機大手は「総合電機」と呼ばれる業態を採る。原子炉、ミサイルからヘアドライヤーまで、電気に関わるありとあらゆる製品を手がけるコングロマリット経営である。一つの会社の中で様々な事業を抱えるため、業績が見通しにくく、株価が上がらない状況は「コングロマリット・ディスカウント」とも呼ばれた。

しかしインターネットの普及を境にコングロマリットが維持できなくなった。デジタル技術の革新が進み、テレビ、ビデオレコーダー、ステレオ、デジカメ、パソコン等、日本メーカーが得意としてきたデジタル家電の機能はポケットにすっぽり収まるスマホに集約された。

 

しかも利益の源泉はデバイス(ハードウエア)ではなく、プラットフォーム(ソフトウエア)に替わり、アップル、グーグル、フェイスブックといったプラットフォーム企業が主役になった。

だが日本からはそうしたプラットフォーム企業が登場せず、総合電機がアップル、グーグル、フェイスブックに対峙した。空母と爆撃機とレーダーを駆使した連合国に、古色蒼然の大艦巨砲で立ち向かおうとした日本軍と全く同じ構図である。

日本の構造転換を遅らせた要因は何か。

それを考えた時、筆者は一つの答えに行き当たった。東京電力とNTTである。戦後の復興期から、東電と電電公社の設備投資は国家予算に匹敵し、その恩恵に浴して電機産業が育った。

つまり日本の電機メーカーは東電とNTTの下請けであり、国民が支払う電気・電話料金で成り立つ東電・NTTとその下請けである総合電機が構成する経済は、資本主義の皮を被った社会主義だったのだ。

いま我々が目の当たりにする「電機全滅」は、冷戦崩壊から30年遅れてやってきた社会主義の崩壊なのだ。痛みは伴うが、日本が真っ当な資本主義国になるためには避けては通れない道である。

読書人の雑誌「本」2017年6月号より