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野球 ライフ 週刊現代

楽天・オコエ瑠偉に立ちはだかる「壁」〜一流と超一流は何が違うのか

野球選手の人生は13歳で決まる(6)

昨季、高卒新人で開幕一軍入り。球団初の快挙だった。しかし今季はキャンプ2日目に離脱。プロ選手は誰もが一流の素質を備えるが、輝き続ける選手はごく一握り。「壁」はうすいようで分厚い。

※連載第1回はこちら⇒ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51417
 

「早熟」の脆さ

中学で注目され、高校で甲子園に出場し、そのままプロ入りを果たす。そんな絵に描いたような“天才球児”ならではの野球人生を歩んでいたのが、オコエ瑠偉だった。

2015年、高校野球選手権大会で夏の甲子園を沸かせ、その年の秋にドラフト1位で楽天イーグルスに入団。1年目の昨季、さっそく初本塁打を放って鮮烈なデビューを飾った。そんな19歳のスター候補が表舞台から消えて、しばらくたつ。

1年目は結局、打率1割8分5厘に終わった。成長した姿を見せるべき2年目の今年も、久米島キャンプ2日目にケガでチームから離脱。右手薬指付け根の側副靱帯損傷で、縫合手術を受けた。3月いっぱいリハビリに費やし、4月に練習試合でやっと実戦に復帰したが、一軍はまだ遠い。

一連の経緯には、梨田昌孝監督が「野球をなめている」と怒ったと伝えられた。また、一部週刊誌には、シーズンオフに恋人とハワイに旅行していたとも書かれている。

仙台でオコエに会い、本人の言い分を聞いた。

「指のケガは、去年からバットを振り過ぎたのが原因です。キャンプ初日の不注意なんかじゃなかった。監督に怒られてもいません。オフの間も、ちゃんとトレーニングはやってましたよ。ハワイでも、ウエートやランニングをやってます。彼女も一緒でしたけど、それはご飯をつくってもらう必要もありましたから」

いつの時代も人気選手はマスコミの好餌にされがちだ。それでも、野球の話になると、「状態はいいです」と強調する。

「リハビリ中も下半身は鍛えてたから、ダッシュのタイムが上がってる。いまは野球がやりたくてウズウズしています」

高校時代から、オコエの身体能力の高さは折紙付きだった。183cm、85kgの体格に、高校通算37本塁打のパワー、157kmというプロ選手並みのスイングスピード、遠投120mの強肩、50m5秒96の俊足。最近ではウエートで筋肉をつけ、見るからに逞しくなった。

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しかし、首脳陣の評価は厳しい。昨季、つきっきりで指導した楽天の一軍チーフコーチ、池山隆寛ははっきりとこう指摘する。

「オコエの打撃を建築に例えたら、まだまだ土台づくりの最中です。それ以前に、柱にする材木を鉋で剃ってる段階かな。

具体的な欠点を言うと、バットを振るときに左脇が開くのでスイング軌道が安定しない。いろんな方向にブレる。これではプロのスピードや変化球にはついていけません」

早くまともなスイングができるようにならないと、これからの野球人生がほんの数年で終わってしまう恐れもある。そういう危機感がオコエには必要だ、と池山は言う。

「問題は、オコエ本人にそういう意識があるのかどうか。去年から練習に遅刻したり、持って来るように言った道具を忘れたり、何をやらせても長続きしないんですよね」

なまじ生まれつき素質に恵まれた若者は、そのぶん他人より容易く結果を出せるため、もっと力をつけようという意欲や執着心に乏しい。それが10代のころに素質が開花した選手の脆さであり、その後の伸びしろを失う大きな要因でもある。