政治政策
安倍首相の「憲法改正」戦略は、実に巧妙である
自民党の反発さえも抑え込む自信アリ?
長谷川 幸洋 プロフィール

理想論や狭量なイデオロギー的立場は棚に上げて、現実主義で政治路線を考える。そんな首相の現実重視姿勢は、2015年4月の米国上下両院合同会議での演説や同8月の戦後70周年談話あたりから鮮明になっていた。

私は今回の憲法改正提案もその延長線上にある、とみる。かつての安倍首相であれば、自民党内で議論を重ねた国防軍提案を党に相談もせず独断で引っ込めて、自衛隊明文化で改正を目指すなどは考えられない。自分の指導力に自信をもっている表れだろう。

国民投票は18年冬にも?

憲法改正を決める国民投票を実施するには、衆参両院で3分の2の賛成を得る必要がある。いまのところ、自民党の連立相手である公明党は「自民党内の議論を見守る」として首相提案に対する賛否を明らかにしていない。

公明党は自衛隊の存在に異論があるはずはなく、もともと加憲の立場でもある。だから、いずれ賛否を表明するタイミングになれば、公明党は賛成するだろう。

野党である日本維新の会は9条問題に加えて、憲法改正による教育無償化を唱えてきた。今回の提案には教育無償化も含まれている。したがって維新も基本的に改正に賛成するはずだ。かくて現状では、衆参両院で3分の2の賛成を確保できる。

安倍首相は「2020年に新しい憲法を施行したい」と言っている。そうだとすると、安倍首相はいつ国民投票に踏み切るのか。

 

仮に、2020年春に新憲法を施行するとすれば、国民投票は遅くとも19年秋までには実施しなければならない。投票で過半数の賛成を得て天皇が新憲法を公布、さらに現憲法の先例にならえば、公布から半年後に施行という日程が考えられるからだ。

いまの衆院任期は18年12月まで。その後となると、衆院解散・総選挙か任期満了総選挙の後になるので、改正賛成派の3分の2を確保できるかどうか分からない。

確実に3分の2を得て国民投票を発議するには任期がある18年12月まで、採決を考えれば通常国会が開かれている18年夏までに発議を可決するスケジュールが考えられる。その後、60〜180日以内に実際の国民投票という段取りになる。

もっとも早ければ18年冬に国民投票だ。そのときは衆院解散・総選挙と国民投票のダブル投票になるかもしれない。憲法改正とともに、安倍首相に引き続き政権を託すか否かを国民に問うたほうがプラスという判断がありうるからだ。

あるいは解散・総選挙を先に実施し国民の信を得たうえで、19年秋までに国民投票という日程もありうる。それでも20年施行には間に合う。ただし改憲勢力が3分の2を得られるかどうかは分からない。

いずれにせよ来年は憲法改正をめぐって激動の年になる。