大統領選 ドイツ EU
メルケル4選ほぼ確定!敵の自滅で「選挙戦の目玉」さえなくなった
ドイツの政治地図は千変万化
川口 マーン 惠美 プロフィール

メルケルの高笑いが止まらない

しかし最大の地滑りは、その1週間後、5月14日に起こった。ドイツで最大の人口を誇るノートライン−ヴェストファレン州の州議会選挙で、またもやSPDがCDUに敗北したのだ。

ノートライン−ヴェストファレン州は、かつてのドイツ産業の心臓部であったルール炭田工業地帯を抱える州で、SPDの大地盤だ。さらにシュルツ氏の出身州でもある。

だからこのショックは大きかった。立て続けの3度の敗北。しかも、通常、ノートライン−ヴェストファレン州の選挙結果が、その後の総選挙の成り行きのバロメーターになると言われている。

その重要な州で記録的な敗北を喫したのだから、シュルツ効果はもう跡形もなくなった。それどころか、ベクトル方向が変わって、「シュルツ効果」が党の足を引っ張っている可能性さえある。テレビの画面では、敗北の会見をするシュルツ党首の後ろに、お通夜のような表情のSPD幹部が並んだ。その翌日、ウィキペディアの「シュルツ効果」というページは削除された。

〔PHOTO〕gettyimages

しかし、シュルツ氏のこの急上昇と急降下はいったい何だろう。今年の初め、栄えあるEU議会の議長であった彼が、ドイツの国政に移り、SPD党首に担ぎ出され、党員の前で「私はドイツの首相になりたい!」と豪語して万雷の拍手を浴びてから、まだ2ヵ月も経っていない。あたかもジェットコースターに乗ったような気分だろう。

一方、笑いが止まらないのはCDUのメルケル首相だ。

シュルツ効果がバブっていたころ、ほかのCDUの政治家があたふたと対策に頭を悩ませていたあいだも、彼女は眉ひとつ動かさず、「私は何も心配はしていません」と言っていた。確かにいつもと同じく、メルケル首相は何も心配しなくても、敵は勝手に自滅していく。

 

いずれにしても、シュルツ次期首相という夢は潰えた。

シュルツ氏の今後に関しては、「貧富の格差をなくした平等な社会」を売り物にしたわりには、長いEU政治家時代に、かなり強引な我田引水で膨大な財産を蓄えたというような話がたくさん噴出しており、再び人気が上昇することはなさそうだ。こんな人物を、全会一致で党首にしてしまったSPD党員は、今、後悔の真っ最中だと思う。

〔PHOTO〕gettyimages

つまり、これから総選挙までの4ヵ月、もうドンデン返しは起こりそうにない。よほどのことがない限り、CDUの勝利は確実。そして、メルケル首相がさらに4年間、ドイツを、そしておそらくEUをも支配することになるだろう。

CDUは、「このように勝利が確実すぎる状況では、何を目玉に選挙戦を戦えばわからない」という贅沢な悩みを抱えることになった。