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医療・健康・食 ライフ 週刊現代

なぜ日本人は「薬を飲んだほうが長生きする」と思い込んでしまうのか

ドイツでは伝統的な「薬草」が健在だが

「日本人の最大の誤解は、病気やケガを薬が治してくれると信じていることです。でも、本当は薬はわき役なのです。治すのは本人の治癒力や免疫力であって、薬はその手助けをしているに過ぎない。

たとえば抗菌剤が出てきたことで結核で亡くなる日本人は大幅に減りました。確かに抗菌剤は重要な薬ですが、結核が減った原因は薬のおかげというよりも、日本人の栄養状態が大幅に改善され、体力がついてきたことも大きく影響しています。

そういうことを理解しないで、『病院に行ったら薬をもらわなければ損だ』と考えている人が多すぎます」

こう語るのは、医師で医療評論家の中村仁一氏。薬は本来、人体にとって異物である。だから、当然「作用」もあれば「副作用」もある。

たとえば、ある箇所の「痛み」だけを除去してくれる便利な「痛み止め」があると思ったら大間違いだ。当然、薬は健常な細胞にも作用するし、時によっては別の新しい症状を引き起こすこともある。

 

日本人の「薬信仰」について、松田医院和漢堂の松田史彦氏が語る。

「かつて病院も医師も身近になかった時代には、山で薬草を摘んできて、煎じて飲むような民間療法がありました。それが近代になって『迷信』として切り捨てられる一方で、西洋医学の医者の権威がどんどん高まった。

医者の言うことは絶対に正しい、科学がすべてだという方向に誘導されていったのです。実際、医者や薬を『信仰の対象』にする高齢者は多く、そういう人にとっては薬が精神安定剤になっている面があります」

薬効があると信じることで自然に治癒力が高まる「プラセボ効果」もあるため、精神安定剤代わりに薬を飲むこともそれなりの意味があるという人もいる。

だが問題は、プラセボ効果以上に副作用が出ることだ。飲むことで寿命を延ばすという科学的な根拠のある薬は、実はほんのわずかだ。

健康増進クリニック院長・水上治氏が語る。

「近代医学の薬はほとんど対症療法です。たとえば、血圧が高いから降圧剤を飲む。しかし、高血圧の原因を解消しているわけではない。そんな薬を何年にもわたって飲み続けて、それで病気が治っていると勘違いしているのが日本人なのです。

確かに高血圧の人よりも、血圧が正常の人のほうが長生きするでしょう。しかし、薬で血圧を無理矢理下げている人が、少し血圧が高くてそれを放置している人よりも長生きするデータなどどこにもないのです」

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