裏社会 アメリカ

ニューヨークの地下トンネルで暮らす人々の「こんな事情」

クレイジージャーニー裏日記⑩

世界の危険地帯を旅する、犯罪ジャーナリストの丸山ゴンザレス。ラスベガスの地下住人に会ったのち、向かったのはニューヨークだ。

都市伝説なのだろうか

ニューヨークの地下スペースに暮らす人がいることは、ぼんやりではあるものの多くのニューヨーカーが認知していた。古くは1980年代から、地下で暮らす人々の存在が「謎の地下都市が存在するかもしれない」というロマン(?)と結びついて、あたかも実在するかのように囁かれていた。

実際には、地下都市が築かれていたというよりも、様々な問題から地上を捨てて地下のスペースに暮らしているコミュニティが複数あっただけ。連携したり、組織をつくったりということはなかった。

ただし、多いときでは数千人単位のコミュニティなっていたため、社会問題になってしまった。治安悪化を懸念した当局の判断により徐々に取り締まられるようになり、2001年に起きた9・11の同時多発テロ事件がとどめとなって、ほぼ消滅したのだった。

 

地下鉄のような交通インフラは、軍事施設と同じようにテロの標的となりやすいため警備の強化が一気に進み、地下鉄や連絡通路といった場所に住み着いていた人々が一斉に取り締まられ追い出されたのだ。確かにテロ対策としては必要なことだろう。

9・11テロから16年が経過して、多くの人々が暮らしていた場所は一体どうなっているのか、考えるほどに気になってしまう。アメリカのホームレス問題と地下住人の存在は、私自身も長年取り組んできたテーマのひとつになっている。好奇心がかきたてられ、取材せずにはいられない気持ちになるのは必然的な流れだった。

準備を重ねてニューヨークに行くことができたのは2016年の暮れだった。いざマンハッタンやブルックリン、クイーンズで聞き込みを重ねてみると、それほど安易な取材とはならないことをいきなり痛感した。話しかけた人から返ってくるのは「聞いたことはあるかな」ぐらいの反応。掴みどころのない地下住人の希薄な存在感。これでは、そのまま都市伝説で終わってしまう。

とはいえ、この程度の聞き込みで音を上げるようではジャーナリストとは言えない。断わられてからスタートするぐらいでないと、本当に必要な情報の断片すら捉えることもできない。かつて週刊誌で取材を重ねていた際に、そんなことを学んだ。それがわかっているだけに、しつこく聞いて回り続けた。「蛇の道は蛇」というか「ホームレスのことはホームレスに尋ねよ!」ということで、マンハッタンの路上で暮らす何人かに声を掛けてみる。

「危ないから近づくな」と釘を制されつつも、何人かは「あ~それなら△△公園のなかで見たことある」と、ある程度場所が絞れるような情報をくれたのだった。

諦めないことが勝ちを生み出すというのはまさにこの事。そう実感したが、まいったのは、日本から来たジャーナリストだと名乗ると、ホームレスがトランプ大統領への持論を話始めたこと。まあ、アメリカらしさを垣間見れた気がしたし、なによりある程度有益な情報を得られたので良しとした。

さて、目的の場所が分かった。協力してくれた人たちの居場所特定を避けるために、ここではマンハッタン島の中部エリアとだけ記しておきたい。