不正・事件・犯罪
本当に怖い共謀罪!「LINEを証拠に逮捕」の冤罪事件が語る教訓
罪は、どうにでも作り上げられる
伊藤 博敏 プロフィール

プライバシーは丸裸

だが、そこは踏みとどまった。

その教訓と、「黙秘権行使の最大の武器は房から出ない出房拒否で、それは認められた権利だ」という高田良爾弁護士のアドバイスに従って、房安氏は、「本件」ともいえる4月11日の逮捕では、最初の数日は刑事、検事の取り調べに応じたものの、以降は、留置係が来ても房から出ることを拒否した。

「黙秘するといっても、8時間以上、沈黙を貫くのは無理で、『雑談でもしようか』と、言われると応じてしまう。すると、そこで話したことをもとに捜査員が裏付けに走ったり、揚げ足を取られるような質問を受けたりしました。前回のそんな経験から、いっそ、出ない方がいいかな、と」(房安氏)

結果、検察は起訴できなかった。ということは、「証拠がある」というのはウソで、それらしきものは、どうとでも解釈できるLINEのやり取りだけだった、ということだ。警察はいつも通り、密室に閉じ込めての自白にかけたのである。

出房拒否もさることながら、この事件は捜査が完全に新たなデータを使った新たな手法で行われる時代に入ったことを意味する。

奇しくもLINEは、4月24日、犯罪捜査の過程で、16年7月~12月に捜査機関から利用者情報の開示請求が1719件あり、事件への関与が疑われる人物や被害者の電話番号など1268回線のデータを提供したことを明らかにした。

 

データは捜査当局に提供される。そのデータたるや、以前とは比較にならない膨大な量が、蓄積されている。

今回の無料通話アプリはもちろん、音声も、行動履歴も、購買記録も、メールのやりとりも、すべて検索エンジンやSNSなどプラットフォームを持つ業者が、利用者の「同意」を得たとして蓄積し、利用し、加工して販売する。捜査当局への提供は、裁判所の令状など段階を踏むが、逆にいえばルーティン化した作業のなかで、我々の膨大な個人情報は捜査当局に流れる。

プライバシーなど完全に無視して捜査当局が国民を丸裸にできるわけで、怖いのは、現在、国会で審議されている共謀罪が、犯罪を共謀した証拠として、メールやLINEをあげており、それを補完するために関係者の供述が欠かせないとしていることだ。

つまり、共謀罪における事前謀議という内心を推し量る作業は、ビッグデータのなかに既に格納されている。

それをどう使うかは捜査当局しだいという怖さが、今回、房安氏が経験した強盗殺人容疑での取り調べのなかに潜んでいる。