企業・経営
東芝よ、日本の監査制度をコケにするのもたいがいにしろ
なぜ誰も怒りを表明しないのか
磯山 友幸 プロフィール

経営幹部が舐めきっている

そんな東芝は、監査法人から「意見不表明」になっても、堂々と有価証券報告書を出すのだろう。実際、昨年10-12月の四半期報告書は「意見不表明」のまま、財務局に提出され、財務局も何も無かったかのように受理している。本決算が「意見不表明」になっても、提出された有価証券報告書を受理するに違いない。

 

これは監査制度の危機だ。東芝の行動は「監査意見なんて無くてもいい」と言っているに等しいからだ。日本の資本市場の歴史の中で、ここまで堂々と開き直って、監査制度をコケにした企業は無かった。

にもかかわらず、監査法人や会計士の間からは、東芝の姿勢を厳しく断罪する声が挙がらない。昨年7月に日本公認会計士協会の会長に就任した関根愛子氏は、「監査制度の信頼回復」を掲げて会長選挙を勝ち抜いたが、一向に東芝を強く批判する発言はしていない。

それどころか、記者会見で「監査法人は自分たちの納得のいくまで会社側と話すことが必要」と述べて、担当のPwCあらたがもっと東芝と意思疎通するよう求めるかのような発言をしている。

資本市場で株式を売買する投資家にとって、企業が公表する決算書が正しいかどうかは極めて重要な情報だ。粉飾されて利益を上乗せした決算数字を信じて株を買えば、実態が判明した時点で大損するリスクを背負い込む。その信用の根源を支えているのが監査制度なのだ。資本市場が真っ当に機能するための基本的なインフラと言ってもいいだろう。

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では、粉飾決算で投資家を欺く企業が出てきたらどうするか。そうした「悪貨」を駆逐するために、証券取引所は「上場廃止規定」を設けている。有価証券虚偽記載をした会社や、監査意見を得られなかった会社は市場から追放するぞ、と規定しているわけだ。

ところが、東芝の場合、この規定に対しても開き直っている。「どうせ、うち(東芝)のような大企業を東証は上場廃止にできないだろうと、経営幹部が高をくくっているように感じる」と、上場廃止を判断する役目を担う東証自主規制法人の外部理事のひとりは言う。

東証も金融庁も公認会計士協会も、なぜか皆、東芝に対して怒りを露わにしないのである。露わにしないというよりも、怒っていないのではないか。自分たちが支える資本市場や取引所、監査制度の根幹を揺るがされているというのに、そうした実感がないように見える。

まともに監査意見を取れなかった企業が上場を維持し続け、市場での売買を許される――。今後、粉飾決算をする企業や、監査意見を取れない企業が出て来るたびに、東証は、なぜ東芝だけが「例外」なのかを説明せざるを得なくなる。

監査意見なんて無くていい、という企業が次々と出てきた時に、会計士協会は何と反論するのだろうか。東芝の問題は、東芝一社の問題にとどまらず、日本の資本制度の根幹を問うている。