企業・経営

東芝よ、日本の監査制度をコケにするのもたいがいにしろ

なぜ誰も怒りを表明しないのか
磯山 友幸 プロフィール

騙されていたのか

東芝は5月15日、監査法人からの監査意見を得ないまま2017年3月期の「連結業績概要」を発表した。米原子力子会社ウェスチングハウスの米破産法申請に伴う損失などで、最終損益は9500億円の赤字(前の期は4600億円の赤字)となった。製造業としては過去最悪の赤字決算で、5400億円の債務超過に陥った。

決算発表時に監査意見を得ていないケースがないわけではないが、そうした企業は6月末の有価証券報告書提出期限までに「無限定適正」意見を得られるメドが立っている場合がほとんど。これに対して東芝は、6月末までに適正意見を得ることがほぼ絶望的と見られているにもかかわらず、決算の公表に踏み切った。まさに異例中の異例の展開と言っていい。

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監査制度は、会社から独立した第三者の専門家である公認会計士が、企業が作った決算書が正しいかどうかを「証明」するもの。つまり、東芝の9500億円の赤字という決算は、正しいのかどうか判断しようがないという代物なのだ。

東芝の監査を担当するPwCあらた監査法人は4月11日に公表した2016年10-12月決算の四半期レビューで、「結論を表明しない」とした。決算書の内容が真実を示しているかどうか確信するための情報が十分に集まらなかったとする、いわゆる「意見不表明」である。

それ以降、東芝と監査法人の対立は抜き差しならない状況に陥った。東芝はいったんPwCあらたを担当監査法人から解任して他の監査法人に変更する考えだと報じられたが、締めの段階になっている2017年3月期を一から引き受ける別の監査法人が出て来るはずもない。

 

昨年まで監査していて東芝にクビにされた新日本監査法人や中堅の太陽監査法人の名前も噂されたが、結局引き受け手が現れなかったようで、当面、PwCあらたのままで行く見通しとなっている。もっとも、東芝とPwCあらたの間で「信頼感」は瓦解しているとされ、このままでは本決算も「意見不表明」になる可能性が高い。

こうした状況に対する東芝の姿勢には、「開き直り」を感じさせる。社内向けの説明や記者会見でPwCあらたの監査について不平不満とも聞こえる解説を行ったのだ。

監査法人の言う事に対応しても、次から次へと課題が指摘されるとし、あたかも、監査意見が出ないのは監査法人の姿勢に問題があると言わんばかりだった。監査法人のすげ替えの話がメディアに流れたのも、こうしたタイミングだった。

PwCあらたからすれば、東芝が作った決算書をそう易々と認める訳に行かないのは当然だろう。昨年末に東芝に「煮え湯」を飲まされているからだ。2016年4-6月期、2016年7-9月期と監査レビューを行い、適正意見をだしていたにもかかわらず、12月末になって、報道をきっかけに、それまで認めていなかった米国子会社の巨額の損失が表面化したのだ。監査法人からすれば、騙されていたということになる。

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